広島が2連覇した13年以来、2年ぶりの年間優勝に王手をかけた。敵地での第1戦は、常に先行を許しながら後半ロスタイムにDF佐々木翔(26)が同点、MF柏好文(28)が決勝点を挙げ、大逆転勝利。年間勝ち点1位の実力を示し、同3位で2連覇を狙うG大阪を劇的に下した。第2戦は5日に本拠地Eスタで実施。優勝すれば10日から日本で開幕のクラブW杯に開催国代表で出場できる。

 誰がこんな大逆転劇を想像しただろうか。超満員の敵地万博。広島は1点ビハインドで前後半の90分が過ぎた。ロスタイムの表示は5分。ここから、ドラマチックな展開が待っていた。

 後半46分にDF佐々木が頭で決めて2-2の同点。さらにロスタイム5分を過ぎた同50分25秒。G大阪今野のスローインを森崎和が奪い、ドウグラス、浅野と続いたシュートのこぼれ球を途中出場の柏が決めた。

 会場は歓喜と悲鳴が渦巻く。誰より興奮していたのは森保監督だった。終了から約20分が過ぎても顔は硬直し、唇は震えていた。

 「反発力と、劣勢に立たされても粘り強く戦う継続力を、選手が見せてくれた。2-2で終わっても我々にとっては悪くない結果だったが、(選手が)試合の流れを読んで決勝点につながった。ただまだ半分しか終わっていない。次戦、心から喜べるようにしたい」

 日本代表が初のW杯出場を逃したドーハの悲劇(93年10月28日)。当時を経験した両監督による頂上決戦は、森保監督が劇的に歓喜をつかみ、G大阪長谷川監督がまた悲劇を味わった。

 ドラマを演出したのは、故障から復活した男だ。殊勲の柏は、9月29日の練習中に左膝靱帯(じんたい)を損傷。優勝した第2ステージ終盤を棒に振った。途中出場から決勝弾を決め「交代した選手が決めるのが今年の広島の象徴。得点の喜びだけでなく、この喜びを(優勝して)広島に携わるみんなの喜びにしたい」と声を大にして言った。

 救われた男もいた。後半15分、自陣のバックパスで森崎和と千葉がお見合いをするミスから先制点を献上。ミスを引きずらず、最後の最後に森崎和が相手ボールを奪って前線につなぎ、奇跡の勝利を生んだ。相手に退場者が出たことで、森崎和は「好機があれば攻めに行こうと思ってた。3点目を奪って1戦目を終えることができて本当に良かった」と胸をなで下ろした。

 リーグ戦は最多得点と最少失点で年間勝ち点1位。強さは本物だ。中2日で迎えるホームの第2戦は、引き分けでも優勝が決まる。どんな苦境もものともしない広島が、2015年の頂点に立つ。【益子浩一】

 ◆CS決勝の試合方式 90分間で同点の場合は引き分け。2試合を終えて勝利数が多いチームが優勝。同数の場合は2試合の得失点差、アウェーゴール数の順で決め、それでも同じ場合は第2戦終了後に延長、PK戦へと進む。勝者が年間王者で敗者が同2位になる。優勝賞金1億円。