目前のゴールが、その向こうのタイトルが、果てしなく遠かった。後半ロスタイム4分。1点を追う浦和はパワープレーを仕掛けていた。ペナルティーエリア内まで上がっていたDF槙野智章(28)の目の前に、こぼれ球が落ちた。身体を投げ出しながら、懸命に右足シュート。しかし飛び出したGK東口の正面を突き、同時に試合終了の笛が鳴った。

 槙野はピッチに仰向けに倒れたまま、しばらく立ち上がれなかった。「いつも同じような展開で負けてますし、ちょっとした差だと思うのですが、G大阪の方が正直、いいサッカーしている。結果がすべてでもありますし。おめでとうと言わないといけないけど、悔しいです」。

 前半の開始直後には、G大阪FWパトリックのシュートを阻みにいった際、味方のGK西川と交錯。スパイクのポイントが右手親指付け根に完全に刺さり、大量に流血した。「パックリいきました」。普段は激しい接触プレーをものともしないが、治療がすんでもしばらく痛みにもだえ続けていた。しかしすぐに気を取り直し、パトリックと激しいバトルを繰り広げた。

 痛恨だったのは、後半8分の相手CKの場面。パトリックを密着マークしていたが、他のG大阪の選手にブロックされ、距離を置かれた。追いすがったが間に合わず、パトリックに決勝弾を決められた。同僚は主審に抗議もしたが、槙野は「完全にブロックされた。ただ、そこも分析はしていた。ちゃんと抑えないといけなかった」と受け止めた。

 勝てば優勝だった、14年リーグ終盤戦での直接対決。15年2月のゼロックス杯。昨季リーグチャンピオンシップ準決勝。タイトルがかかった試合で苦杯をなめさせられ続けてきた因縁の相手に、またも敗れた。

 なぜ勝てないのか。心が折れそうになる結果を突きつけられても、槙野は懸命に前を向いた。「挑戦をやめちゃいけない。なぜだ、なぜなんだと思うこともある、でも、やり続けるしかない。自分たちは試されている。これを乗り越えることができれば、リーグ優勝など、大きなものが見えてくると思う」。

 槙野は「守備のやり方を見直す必要はある。個人個人の間では意思疎通がはかれている部分はあるけど、組織としてベースになるものが必要。合宿から取り組みたい」と言った。悲しみにくれる間もなく、早くも2週間弱の短いオフの向こうを見据えた。