湘南ベルマーレの曹貴裁監督(48)は、14年11月15日以来、2年半ぶりとなる神奈川ダービー前のミーティングで、選手たちに、22日に乳がんで亡くなった小林麻央さん(34)の話をしたと明かした。

 横浜FC戦後の会見冒頭で「単純に1つのボールを奪い合うサッカーですけど、僕は本当に人生そのものだと思っていて。大丈夫だと思って足を止めたら大丈夫じゃなかった、もうダメだと思ったらダメになる…でも諦めなかったら何かが起こるのは人生と同じ」と語った。そして、こう続けた。

 「ガンで亡くなった女性は、個人的には存じ上げていないですけど、選手に話をしました。生きたいと思って日々、一生懸命暮らしていても、病魔に襲われて亡くなるのもこの世の常。その中で我々はサッカーを通じて、見ている人にメッセージを送ることが出来る。彼女が自分の命を懸けて表現されたもの(ブログ)は全世界、世の中につながっていると思います。その足元にも本当に及ばないことですけど、少なくとも自分たちはサッカーを通じて、湘南が何をしたいか伝えないと何も起こらない」

 麻央さんのことを話した件について「全然、知らない方なのに、話題に上げるのもどうかと思った。関係者の方には迷惑かも知れないと…」と、面識のない人の話をすることがいいことなのか悩んだという。それでも「彼女のいろいろなものを見ていて、胸を打つものがありました。出発前のホテルで、選手にその話をずっとしていました。サッカーをやらせてもらっているという気持ちで、ピッチに立とうという話は(麻央さんには)失礼だったと思う。でも…僕は彼女の気持ち(真意)を知らないですけれど、人として受け継いでいこうと思った」と、自身の胸を打った麻央さんのことを真っすぐ選手に伝えた。

 DF山根視来(23)は「自分たちが何でサッカーが出来ているのか、見に来てくれた人に何を伝えたいかと(考えさせられて)今日のプレーでしっかり出した。口に出すのは難しいですけど、本当に死にものぐるいでプレーしました。戦術とかじゃなく、気持ちという試合を見せられたと思う」と振り返った。

 結果は、オウンゴールでの勝利だった。曹監督は「ラッキーな点だったと思いますけど、サッカーの神様が少し、エネルギーを我々にもたらしてくれたのかな」と神妙な面持ちで語った。【村上幸将】