東北代表のコバルトーレ女川(宮城)が関西代表のアミティエSC京都を1-0で下し、勝ち点7(1勝2分け=2PK勝ち)で初優勝した。上位2チームに与えられる来季の日本サッカーリーグ(JFL)昇格を決めた。

 コバルトーレ女川は後半5分にMF国分俊樹(21)が2枚目の警告で退場となり、数的不利に陥ったが、豊富な走力を武器に互角に渡り合った。そして同36分、ゴール前のこぼれ球を途中出場のFW高橋晃司(24)が蹴り込み、これが決勝点。試合終了のホイッスルに選手、スタッフ、そして女川町から駆けつけたサポーターが喜びを爆発させた。

 クラブ創設3年目の2011年3月11日。未曾有の東日本大震災で女川町は高さ18メートルという大津波にのまれた。町は壊滅的な状況に陥り、死者575人、行方不明者340人。当時、東北リーグに所属していたチームのクラブハウスと寮も全壊した。チームは1年間の活動を休止し、ボランティア活動など町の復興のために汗を流した。

 その震災時を知る阿部裕二監督(46)は試合後、サポーターのもとに勝利を報告に行くと、もうあふれる涙を止められなかった。「僕は震災の年に就任して7年、うちに関わってくれた選手、いまだに関わってくれる選手、いろんな、みなさんの思いでここまでつないだ。それが自分の中で一つになって涙となって流れました」。地元・宮城出身の指揮官は、そう吐露した。

 1次リーグはC組2位。各組2位で最も成績のいいチームに与えられる“4番目”のワイルドカードで進出。決勝ラウンドに進んだチームには元Jリーグクラブ所属の選手が名を連ねる中、コバルトーレ女川はまったく無名の雑草集団。それが下馬評を覆し、優勝という結果をもたらした。

 来季のJFLに向け、阿部監督は「間違いなく勝てない」というと「ガハハハ」と高笑いし、「全体的にチーム力を見直してもう一度鍛え直したい」。

 未曾有の大震災を乗り越え、たどりついたJFLという舞台。それでもJリーグを目指すチームにとっては、「まだ一番最初の目標」でしかない。町に笑顔をとどけるべく、選手たちの戦いはまだ続く。

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 なお、大会の最終結果は次の通り。

 <1>コバルトーレ女川(勝ち点7)<2>デゲバジャーロ宮崎(同6)<3>VONDS市原(同3)<4>アミティエSC京都(同2)※上位2チームが来季JFLへ昇格する。