全国高校サッカー選手権で初優勝した前橋育英OBで、元日本代表MFの山口素弘氏(48=名古屋アカデミーダイレクター)は8日、後輩たちの活躍ぶりを喜んだ。

 この日は、静岡で行われた元代表DF市川大祐氏の引退試合に出場。決勝を見ることはできなかったが、歓喜は帰京する車中で知った。パーキングエリアに車を止めて恩師でもある山田耕介監督(58)の優勝インタビューに耳を傾けた。「うれしいですね。ここまで長かったから。だからこそ、喜びも大きい」と話した。

 86年度に選手権初出場したチームの主将を務め、開会式では選手宣誓もした。「当時は出ただけ。学校もリーゼントの生徒がいたりして、まだまだこれからだった。日本一なんて、考えもしなかった」と、31年前を懐かしんだ。

 「当時の山田監督は怖くて、厳しかった。島原商出身ですから」と話した。小嶺忠敏監督(現長崎総科大付監督)が率いた長崎・島原商はハードな練習で有名で、その教えを引き継いだ山田監督の練習もハードだった。「監督の運転するマイクロバスで練習試合に行くんですが、負けると途中で降ろされて学校まで走らされた」と山口氏は秘話? を明かした。

 「今の選手は『監督を男にしたい』らしけれど、当時は『監督に負けてたまるか』と思って練習した」という。そんな厳しかった山田監督が、指導した選手として必ず名前を挙げるのは山口氏と元代表MFで横浜F・マリノスなどで活躍した故松田直樹氏。山口氏は「そうやって、名前を出してくれるのは、うれしいですね」と話した。

 多くのJリーガーを輩出した前橋育英だが、ボランチやセンターバックに日本を代表する選手が多い。山田監督は「当時(清水東、清水商、東海大一など)清水勢の攻撃力が圧倒的だった。テクニックのある清水のMF陣に対抗するには、能力のある選手をボランチにするしかなかった」と話している。山口氏もFWからMFにコンバートされ、その後日本を代表するボランチへと成長した。

 山口氏は今大会のテレビ解説を務め、山田監督にも会って話をしている。「去年の決勝(青森山田に0-5)の悔しさが、今年の優勝につながったんでしょう。監督にも選手にもおめでとう、そしてありがとう、と言いたいですね」と、優勝までの長い道のりに思いをはせ、讃辞をおくった。