湘南ベルマーレの曹貴裁監督(49)は、2年ぶりとなるJ1の舞台で17年の王者・川崎フロンターレと引き分け「(最後にJ1で戦った)2年前の試合と違って、しっかり矛と盾を出せるようになった」とチームの成長を口にした。

 曹監督は、会見の冒頭で総括を語る中で「見ている人はスペクタクル(を感じたのではないか)。川崎さんは技術の高さと崩しの精度のバリエーション、うちはしゃにむに粘り強く、前の走力を生かすみたいな戦いになりましたけど」と切り出した。その上で「勢いがあるということだけじゃなくて、相手の時間帯で、しっかり盾を使って相手の動きをせき止めるのは、昨年から良くなってきた。今日も先に点を取られて、難しい展開の中、選手も下を見ていなかったので、いけるんじゃないかと思った」と、持ち前の走力を生かし縦に速く攻める“湘南スタイル”に、耐えて守る力も高まってきたことを強調した。

 一方で「川崎さんは、本当に奪った後のボールの動かし方、角度の作り方、パス&ゴーが洗練されていて、さすがに去年のチャンピオンだと思いましたし、同点でしたけど、我々とはまだまだ差がある」と、川崎Fとの実力差を認めた。「プレスをかけても彼ら(川崎F)は技術が高く、我々はかわされているだけ。それも成長につながる」とも語った。その上で「(ホームの)BMWスタジアムでは、その差を埋めるべく、もっと精度のある試合が出来るように頑張っていきたい」とホーム戦への抱負を語った。

 また後半44分、途中出場のFW野田隆之介が、左サイドをドリブルで独走しシュートも、GKに阻まれた場面について触れ「同点に追いつけたのは良かったですが、最後の野田のシュートが入れば…やっぱ、野田だなと思った」と言い、取材陣を笑わせた。

 曹監督は総括を語る中で、現代サッカーの潮流について自説を展開した。

 曹監督 今のサッカーは、ある一方に偏ると、ふたをする“いたちごっこ”を、どう乗り越えるかというところにきている。逆に全てを良くしようと思うと、特色がなくなってしまう…すごく難しい世界、瞬間にいる。我々で言えば、特色を磨くことが勝ちにつながるかというと、そうでもないこともありますし、逆にそれがなくなれば我々じゃなくなってしまう。監督として本当に日々、試行錯誤している。今シーズン通して、答えを見つけていきたいし、選手がまだまだ成長するのを信じてやりたい。

 質疑応答の中では、その点についても質問が飛んだ。「ひょっとして成長してある程度、やれるようにはなったけれど特徴は出せないと感じているのか?」と聞かれると、曹監督は「いや、全然そんなことはなくて。やっぱり、サッカーって相手のチームがあって、自分たちのチームがあるものだから、相手が我々の特徴を出させないようにするのは当たり前。ベストじゃなくベターな方法を選んでいくのが、今のゲームプランで要求されることだろうと思う。そのギリギリのところに色が出るし(湘南も)そういう時代になった」と語った。【村上幸将】