名古屋グランパスの特別指定選手のFW榎本大輝(21=愛知・東海学園大4年)は、公式戦にデビューした浦和レッズ戦でフル出場を果たしたが、試合後「(プロの)洗礼っすね」と苦笑いを浮かべた。

 試合後の取材で、まず最初に挙げた洗礼は、失点に絡んだ後半20分のプレーだった。右サイドでパスをしたが、やや安易に出したところを浦和の元日本代表MF阿部勇樹に奪われ、そのまま中央にスルーパスを通され、FW李忠成(32)に追加点を決められた。「当たり前ですけど、あんなところで取られたら(失点は)普通だと思う」と反省した。

 もう1点は、浦和の日本代表DF槙野智章(30)に1対1で勝負を仕掛けたが、抜けなかったことだ。「抜けなかったですね。ちょっと悔しかったです。抜いてやろうと思ったんですけど…速かったです。強いっすね、足とか。全然、見たことのない感じでした」。ただ、163センチの身長で、プロとの体格差を感じたかと聞かれると「逆に小さい分、細かいところ…相手が出してきた足のところに入っていければ。先に動ければって感じ。でも、当たられたら体勢、崩してしまうんで。そこを気を付けたい」とハンディとは感じていないことを強調した。

 口にした悔しさとは裏腹に、表情はサッカー少年のようにキラキラと輝いていた。17年はJ2のFC岐阜で特別指定選手だったが、大学のスケジュールの都合で練習に行けず、試合にも出なかった。埼玉スタジアムはもちろん、Jリーグのスタジアムでプレーしたのも初めてだといい「すごいなぁ…大学ではない感じ」と振り返った。

 自己評価を聞かれると「全然っすね。そんな点をつけるなんて…失点とか絡んだんで、プラスマイナス0。0点ですね」と自らダメ出しした。その一方で「緊張もなく、楽しんでやろう。特徴なのでアピールしていこうと思った」というドリブルに光るものは見せた。前半19分、浦和守備陣をかわして中央を突破すると、ペナルティーエリア手前で阿部に止められたものの浦和ゴールに迫った。

 後半6分にもドリブルで浦和陣内に仕掛けたが、ペナルティーエリア手前でDF2人に挟まれて倒された。前半、阿部に倒された場面は「あれはファウルっす」と指摘した。一方で「(通用した手応えは)ありましたけど、まだまだ全然…結局、倒されているんで。当たらなかったら、シュートまで行けているんで。まだ甘い」「後半、いいところにタッチは出来たんですけど速さに潰されてしまった。ファウルであっても、なくても、トライしていかないと」と最後に止められたところに、プロの壁も感じた。

 3月末に大学の試合でケガをして以降、リハビリを続け、大学でも試合に出ない中、名古屋で練習してデビューを果たした。風間八宏監督(56)が会見で「前半は非常に良かった。1番は、トライするというのが、すごく良かった」などと評価したことを伝え聞くと「デビューしたてで周りが、まだ見えていなかった。今後は見えると思う。得点に絡んでチームに貢献していたらいい」と今後の飛躍を誓った。【村上幸将】