サッカー選手のセカンドキャリアに新たな試みが誕生した。元日本代表のJ2ロアッソ熊本FW巻誠一郎(37)と元なでしこジャパン(女子日本代表)の浦和レッズレディースFW安藤梢(36)が、現役選手との“二足のわらじ”でビジネスの世界に足を踏みれることになった。

 ITによる健康情報を統合活用したヘルスケア会社のCF Partners株式会社(東京・千代田区)が26日、巻を「社外取締役」で、安藤を「取締役」で7月1日付で同社に迎え入れたことを発表した。

 同社が行っているのは、スマートフォンのアプリを通じて医療機関などと連携し、日々の体調記録(ライフレコーディング)や血液データを収集することで、健康増進や予防サービスの情報提供を受けられるというもの。トップアスリートのような「マイチーム」によるコンディション管理が可能になるという。

 現役選手がビジネスに関わるケースはままある。本田圭佑は実業家としても有名。サッカースクールやクラブを経営する傍ら、先日は米国の人気俳優ウィル・スミスと共同で新興企業向けに投資ファンドを設立することを発表した。また、日本代表で活躍した中田英寿は、菓子メーカー「東ハト」の非常勤執行役員として商品パッケージのデザインに関わったことがあった。

 同社関係者は「経営者として活躍する本田選手の例はありますが、現役選手がまったく異なる会社に、今回のように関わることはあまり聞いたことがありません」と話す。今回のことについては「商品の普及を目的としたアドバイザー的な仕事がメインですが、営業に同行して新規販路の開拓もやっていただくことになる。巻さんは熊本在住ですが、(衛星回線の)スカイプを使うなど定期的に会議にも参加してもらい、こちらから熊本に出向くこともある。また、安藤さんには週の3、4日ほど出社してもらい、我々と同じ目線で経営について考えてもらう」と説明した。

 今回の例は、アスリートのセカンドキャリアにも一石を投じるものとなりそうだ。これまでなら選手寿命が終了したタイミングで次の仕事に向かうのが常だったが、現役選手と平行して新たなキャリアを積み上げていく。同社関係者は「あくまで選手としてまず頑張ってください、と伝えている」と断った上で「現役時代から始めれば(この先の)広がり方が違う」と断言する。

 巻は同社を通じて「ライフレコーディングの記録やコンディション管理の重要性は、普段から自分の心と身体のコンディションを見える化してデータで残していくことにより、パフォーマンスの向上に繋がることにあります。また、それをチームとして共有できることは、普段なかなか言えないようなコンディションの細かな変化を伝えることが出来、新たなコミュニケーションツールとしても活用出来るということです。これまで、プロサッカー選手として培ってきているこういった知識と経験を還元し、現役の選手の側面から様々なサポートをしていきたいと思います」。

 また、安藤は「これまで約15年間、ドクター、トレーナー、フィジカルコーチ、スプリントコーチ、栄養士、トレーニングパートナーなどの“チーム梢”に支えられながら取り組んできました。これまでに得た経験や知識をアスリート以外の方々にも生かしていただけたらとてもうれしいです」などとコメントした。

 現役選手の新たな取り組みは、スポーツ界にも波及していくのだろうか。ピッチ外の動向も注目されることになる。