サッカー元日本代表でJ3のSC相模原に所属するGK川口能活(43)が4日、現役引退を発表した。川口の前の世代の代表GKで、横浜の先輩でもある松永成立氏(56=横浜GKコーチ)は「これからは日本のGKの発展に貢献してほしい」と愛情あふれる期待を口にした。

残念とは思わないし、シーズンが続いている中でお疲れさまという言葉はかけたくない。選手をやめて何をやるのかは分からないけれど、自らの経験を後輩GKに伝えてほしい。これは願いでもあるし、能活にとっては義務でもある。彼ほどの経験を持つ選手は、他にいないのだから。

今も、相模原で試合に出ていると「元気にしているかな」と見ることもある。43歳、年取ったなとは思うけれど、自分の中ではまだ18歳の新人。まあ、こちらも年をとったのだけど。

清水商で注目され、マリノスに来た。シーズン前の合宿で、いきなり同部屋。すごく礼儀正しくて、驚いた。あいさつはもちろん、布団の上げ下げまでやってもらった。ただ、緊張はあったのだろう。こっちが起きている時は部屋にいないで、寝てから部屋に来る。かわいそうだったな。

すごい選手だと聞いたけれど、最初に見た時はへたくそだと思った。努力の仕方も分からなくて、もがいでいる感じ。プロの世界に来て、カルチャーショックもあったのかな。でも、その後はすごかった。練習量は人一倍。自分が鳥栖に移籍してからは、すごい努力をしていると聞いた。決して生まれ持ったものではない。自分もそうだけど、能活も努力のGKだった。

その好プレーが「運」で語られることもある。本人にとっては失礼。確かにスター性はあるし、日本サッカーの名場面に数多く登場する。でも、それは積み重ねた努力があるから。何もしなければ、チャンスで結果が出せるわけはない。

自分が分かるのは(ドーハの悲劇で)世界の手前まで。世界のイメージはできても経験がないから、現実味はない。それは選手にも話している。能活には、世界の経験がある。4回もW杯の代表になり、国際Aマッチも100試合以上。他にいないのではなく、楢崎正剛(名古屋)という素晴らしいGKと競い合いながらの記録だからすごい。

だからこそ、その経験を伝える義務がある。能活ならできるし、能活でなければできない。もともと休まない男だから、現役を引退しても休まずサッカーのため、GKのために動くはずだ。間違いなく、日本のGKのステータスを上げたのは能活、だからこそ、今度はパフォーマンスを上げてほしい。日本のGKの発展に貢献してほしい。(談)