サッカー元日本代表で、昨季までJ1ベガルタ仙台でプレーした平山相太氏(33=仙台大)が「監督デビュー」を果たした。セカンドチームの大学日本一を決める地元大会でアシスタントコーチを務める仙台大を率い、環太平洋大(岡山)と2-2で引き分けた。通算1分け1敗で決勝トーナメント進出を逃したが、指導者として確かな1歩を踏み出した。

現役時代「怪物」と呼ばれた平山氏にとって、ほろ苦い監督デビュー戦となった。初采配は引き分けに終わり、「勝たなきゃいけない試合だったんで非常に残念です。監督として心を鬼にしてやらないといけないですね」と勝ちきれなかった試合に苦笑いを見せた。

1-1で折り返すと後半からリスクをおかして勝負に出た。勝たなければ決勝トーナメント進出の可能性が消える状況に「とにかく点を取ることを考えて」と、システムを通常の4-2-3-1から前線を厚くする3-4-3に変更。直後に采配的中の勝ち越しゴールに、思わず手をたたいて喜んだ。しかしその直後、慣れないシステムに戸惑う選手たちから「元に戻したいと」の声が上がり、つい許してしまった。結果、追いつかれてしまい、「日々接しているといろいろな情が湧いてしまう。でも勝たなければいけない試合では、情を断ち切ってしっかり決断しなきゃいけないですね。初めて分かりました」と反省した。

今春、将来の指導者を目指し仙台大に入学。6月からサッカー部の控え組にあたるセカンドチームのコーチを務めてきた。距離を縮めたいとの気持ちから選手には「相太君」と呼ばせている。DF谷村剛志主将(3年)は「今日は相太君の求めるレベルに僕らがついていけなかった」と優しき新米指揮官の期待に応えられず、無念の表情を見せた。ケガに泣かされた現役時代を終えた平山氏の第2の人生は始まったばかり。「まだまだ勉強することがいっぱい。もっと大人にならないといけないですね」と、現役時代同様の穏やかな口調で会場を後にした。【野上伸悟】