“秩父宮1号”はクボタケが放った。1964年東京五輪(オリンピック)以来55年ぶりにラグビーの聖地でサッカーの試合が開催され、FC東京MF久保建英(17)が後半39分に今季初ゴールとなる直接FKを決めた。鳥栖に1ー0で勝利を収め、チームに今大会初白星をもたらした。20年東京五輪のホープが、東京五輪にゆかりある地で記念弾を決めた。

64年東京五輪以来の秩父宮での一戦で、輝いたのは20年東京五輪の星だった。後半39分。途中出場の17歳が今季初ゴールを奪った。MF久保は、ペナルティーエリアの右サイドライン付近から左足で蹴ると、低い弾道で左サイドネットを射抜いた。試合後は「永井選手に言うように言われたので…。“お待たせしました”」と照れ笑いした。

予感はあった。昨季王者の川崎FとのJ1開幕戦で、同じく右サイドから直接FKをポストに直撃させた。この日は「絶対に蹴ろうと思っていた。入って良かった」と価値ある決勝弾を振り返った。秩父宮を所有する日本スポーツ振興センター(JSC)によると、ラグビー以外の競技が行われたのは前回東京五輪だけで日本代表の試合はなかった。久保の1発が、秩父宮での日本人第1号にもなった。

ゴールを決めて最初に駆け寄ったのが長谷川監督だった。「すべてが成長した」とたたえた。信頼の1つは走力の向上だ。久保は「課題や足りない部分を見つけてつぶしていくタイプ」と自己分析し、開幕前のキャンプでは走力トレーニングの走行距離がチームで最長だった日もあった。運動量が求められるサイドで主力の座をつかんだ。

データスタジアムによれば、初めてフル出場したJ1第3節鳥栖戦でのスプリント回数は日本代表DF室屋の26回に次ぐ24回を記録。スピードも向上したことで、反則でつぶされるシーンが昨季から激減した。随一の技術を表現できる身体能力が備わった。

後半17分にジョーカーとして起用され、わずか22分で期待に応えた。週末の鹿島戦でも「続けて決めたい」と頼もしく言い切った。【岡崎悠利】