ヴィッセル神戸が元スペイン代表の“来日初アベック弾”で名古屋グランパスとの壮絶な打ち合いを5-3で制した。

夫人の第4子(次男)出産で一時帰国していた主将MFアンドレス・イニエスタ(35)、さらにFWダビド・ビジャ(37)がともに来日初の1試合2ゴールを記録。今季9ゴールのビジャは得点ランク首位に並んだ。10年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会を制した2人による豪華すぎる共演が実現した。

   ◇   ◇   ◇

神戸フィンク監督が「ファンタスティックな展開だった」と興奮すれば、ビジャは「クレージーな展開」と表現した。観客にとっては夢のような、選手にとっては3度も追い付かれるタフな試合。けりをつけたのは、スペイン代表で世界一に輝いた2人だった。

前半27分にビジャが“ゴール合戦”の幕を開けた。ループ気味に技ありのゴール。同点で迎えた後半17分はイニエスタだ。GKがはじいたボールをゴール左隅へ、狙い澄ましたミドル弾。その後は互いにPKも決め、ともに来日初の1試合2発、そしてアベック弾。イニエスタは「ゴールを決めたら追いつかれて、ネガティブな影響を受けやすい状況でこれだけ点を取って勝ち切れた。得点でチームの勝利に貢献できたのは喜んでいる」と振り返った。

イニエスタは試合2日前に再合流したばかり。次男ロメオ君の誕生に立ち会うためにスペインへ一時帰国し、この日はゆりかごダンスで仲間から祝福された。フィンク監督は「70分ぐらいで交代を考えていた」というが、イニエスタは「時差ぼけもあって前半は体が重かったが、試合の中で状態が上がっていった」。

ビジャはイニエスタを「彼はチームのベストプレーヤー。苦しい展開でもいいゲームにできる。いる、いないで大きく違う」と評した。クラブワースト7連敗の地獄から抜け、5試合連続負けなしで後半戦へ折り返した。MFポドルスキが耳の治療でドイツに帰国中だが「このチームはまだまだ成長の余地がある」とイニエスタ。頼もしい存在が、残り17試合もそびえ立つ。【実藤健一】

◆スペイン勢3人が同日に複数得点は初 神戸のMFイニエスタとFWビジャ、鳥栖のFWフェルナンドトーレスがそれぞれJ1リーグ戦で初の1試合2得点。スペイン国籍選手が1試合複数得点は、FWサリナス(97~98年=横浜M)が5度、MFベギリスタイン(97~99年=浦和)が2度と過去に2人だけだった。

▽今季初ゴールの5点目を決めた神戸FW小川 ドリブルしながらいろんな選択肢を考えた。びっくりするぐらい冷静になれたのが(ゴールの)一番の要因。