ヴィッセル神戸が3-1で清水エスパルスに完勝し、悲願の初タイトルに王手をかけた。主将のMFアンドレス・イニエスタ(35)が先制ゴールなど1得点“1アシスト”の大活躍。右足親指の骨折から復活を遂げて攻撃を完全統率した。神戸は三度目の正直で初の決勝進出を果たし、この日欠場したFWビジャに現役最後の舞台をプレゼントした。初のACL出場も懸けて、3大会ぶり6度目の日本一を目指す鹿島アントラーズと、本格的な競技ではこけら落としとなる元日の国立競技場で対戦する。

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右足親指骨折の影響で約1カ月も戦線離脱していたとは思えない。イニエスタが神業プレー連発で、過去2度ともはね返されていた準決勝の壁を打ち破った。クラブ創設25年目、神戸がついに初タイトルに王手をかけた。

前半13分、DF西のパスを受けてスルッと左へ移動したイニエスタが左足を振り抜いた。この時、周囲にはGK含めて敵は10人。完全に包囲されながら相手の間を抜けてゴール右へ。正確無比な先制点に「試合を優位にできる時間帯の得点だったが、個人よりもチームにとって大事」。8月23日サガン鳥栖戦以来の公式戦ゴールで清水の勢いを消した。

前半18分には上体を激しく動かすボディーフェイントで相手を欺き、負傷していた右足で鋭くシュート。枠の右へ外れたが、完治をアピールした。1点差に迫られ、迎えた後半24分には縦パスでFW古橋のゴールを演出した。その数十秒前にはGK飯倉が同点の危機をビッグセーブで救っていた。流れは完全に神戸へと傾いた。

「あそこで(古橋の)ゴールは価値があった。我々は一致団結して最後まで戦い抜けた。決勝は素晴らしい舞台。神戸のためにタイトルを取る。元日はサポーターと幸せを分かち合いたい」

3-5-2システムの中央のMFに位置するが、時には左右に張り出し、時には最前線でも球を待つ。「入れ替わっている感覚はないけど、よく見てくれているから、いいところでパスが来る」と古橋。DF酒井も「勝つことで全員の思考レベルが高くなっている」。J1残り9戦は6勝3敗。順位は8位だが、見違えるチームになってきた。

今季限りで引退するビジャが体調不良でベンチ外だった。フィンク監督は「決勝は回復して出てほしい。状況を見て判断したい」という。10年ワールドカップ南アフリカ大会で優勝したイニエスタでさえ特別という決勝の舞台。本格的な競技では幕開けとなる国立競技場でスペイン代表の盟友と、神戸を初タイトルへと導く。【横田和幸】