第98回全国高校サッカー選手権に出場する近畿勢の話題や注目選手を紹介します。5回目は大阪代表・興国(初出場)で、監督から「フィールドの監督」と信頼を寄せられる副主将のMF芝山和輝(3年)です。

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興国・内野智章監督(40)が「フィールドの監督」と信頼を寄せる選手がいる。副主将のMF芝山だ。大阪大会決勝では阪南大高を2-0でリードし、後半終了間際から途中出場したように、逃げ切り態勢に入ると投入される。

芝山も「僕はクローザー。締める役割です」と言うほど戦況を冷静に把握できるボランチだ。仲間への指示、高い守備能力。極限の戦いに挑む時間帯で仲間の平常心を呼び起こさせる。来春J2金沢に入団する主将MF田路耀介(3年)は90分通してプレーで統率する。2人は違った役割を担う。

「最初から出るより、途中からの方が合っている。戦況を客観的に見つめ、冷静にプレーできる」と内野監督。

1年から主力チームにいるが完全な先発組ではなく、出場機会に恵まれなかった。ただサッカーの頭脳は超一流だった。「自分に何ができるかと考えたら、相手チームの分析に行き着いた。先輩にもすごくできる人がいて、自分もそんな貢献の仕方があると思った」という。

興国はプリンスリーグ関西に在籍し、ほぼ毎週末になると公式戦を重ねてきた。次戦の相手の映像を週の前半に見て分析するのが芝山の役目で、選手同士と監督の意見をすり合わせ、1つの方向に持っていく。次の相手に酷似した仮想チームを控え組に編成させ、先発組と対戦させる。それも芝山の役目だ。

そういった選手の自主性を尊重する内野監督が「マネジメント能力が高い。将来はいい指導者になるはず」と絶賛する。実際、今秋の大阪大会準々決勝関大第一戦と準決勝近大付戦では「自分が読んでいた通りの試合になり、はまったと思った」(芝山)。

興国の主力級だからスポーツ推薦で有力大学に進む力はあった。だが本人は勉強での推薦で来春、関大への合格を勝ち取った。「僕も将来、指導者になりたい思いはある。でも大学4年間は選手として勝負したい」。

兄武志さんも文武両道を貫く。大阪では有数の公立(豊中)高を出て今年4月、東北大に進んだ。アメリカンフットボール全日本大学選手権の東日本代表決定戦まで進み、早大に10-41で敗れて悲願の甲子園ボウル出場を逃したが、ワイドレシーバー(WR)として21ヤードを稼ぐなど活躍した。弟には十分の刺激になった。

今度は弟が選手権の舞台に立つ。初戦の2回戦は昌平(埼玉)で「両方ともうまいサッカーをする。どちらの守備が耐えられるかがポイントです」。戦前に立てる芝山の秘策も勝負のカギを握る。そして後半残り数分。背番号15の芝山が投入されれば、興国の勝利確率は高くなる。

◆芝山和輝(しばやま・かずき)2001年(平13)6月4日、大阪・豊中市生まれ。豊中二中から興国へ。177センチ、72キロ。