34度目出場の仙台育英(宮城)が3年連続で初戦を突破した。五條(奈良)に先制されるも後半18分にFW佐藤遼の1年生弾で追い付き、1-1からPK戦の末に撃破。1年時からゴールを守るGK佐藤文太(3年)が3本中2本を止めるなど、PK戦は3-0で完勝した。

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仙台育英の186センチ守護神がPK戦の「完封」勝利に導いた。GK佐藤文は後半ロスタイムで交代したDF小林虎太郎主将(3年)からキャプテンマークを引き継ぎ、気合を注入してゴール前に立った。1本目は右に反応したがシュートは中央へ。「足を伸ばして『届け!』、という思い」と、瞬時に右手で地面を押さえてブレーキをかけ、残った左足で止めた。2本目は左に外れ、そしてチームの3連続成功で王手をかけた3本目。「相手の顔色も見て、2本失敗しているので厳しいコースにはこない」と読み切り、右に動き体の中央でブロックした。

展開は重かった。後半5分にCKから先制点を許し、同点後の同25分にはDF中川原樹(3年)が反スポーツ行為の連続で2枚目のイエローをもらい退場。ただシュート数は14-3と圧倒し、同36分過ぎにヘッドが連続でクロスバー、ポストを直撃するなど、数的不利でも攻め手を緩めずPK戦に持ち込んだ。城福敬監督(62)は「文太には1、2本止めてくれる信頼があった。威圧感もある。彼に勝負を託していい」と、絶対的GKの存在に自信があった。PKが苦手な小林主将に代えて残り1分で投入したFW山口蓮(3年)も3人目のキッカーで決め、昨年の一条に続く2年連続で奈良勢を撃破した。

佐藤文は中学まで新潟アルビレックスU-15でプレー。高校は「寮生活がしたかった。自分が生まれた場所で父の知り合いも多い」と、出生から3カ月だけ過ごした仙台で経験値を高めた。大舞台でのPK戦は昨年度の県予選決勝以来。「止めるコースを信じて跳びました」と、正GKとして3年連続の初戦突破をつかんだ。来春から昨年の大学タイトルを総なめにした明大に進学する。「各年代の代表クラスが集まる。自分は入ってないけど、この選手権で結果を残せば、大学でもしっかりプレーできる」と、2大会連続で阻まれた2回戦の壁も突破する。【中島正好】