憲剛が8月復帰へのカウントダウンに入った。昨年11月に左膝前十字靱帯(じんたい)損傷で全治7カ月の大けがを負った川崎FのMF中村憲剛(39)が14日、オンラインで約4カ月ぶりに取材対応した。7月4日から全体練習に部分合流し、試合復帰を見据え、サッカーができる喜びをかみしめながら過ごしている。自粛期間、復帰への思いなどを語り尽くした。

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4カ月ぶりに取材の場に登場した中村の表情は明るかった。昨年11月2日のサンフレッチェ広島戦での負傷から約8カ月。7月4日からチームに部分合流し、パス回しなど、離脱なく練習に励む。中村は「7カ月ぐらい一緒にやらないとアップとボール回しだけでめっちゃ疲れる。サッカーって疲れるなとあらためて感じています」と苦笑い。続けて「これから対人練習も入っていく。今すぐというわけではないけど、8月中には試合に戻れれば」と見通しを明かした。

順調なリハビリが進んでいた3月上旬。膝の痛みが発症しグラウンドで体を動かすこともできなくなった。不測の事態に精神的にも落ち込んだが「逆にじっくり治すしかない」と切り替えた。新型コロナウイルスによる活動休止期間中も、自宅で足に重りを巻いての筋トレなどに励んだ。「1人でやる、きついことは本当に忍耐力がつく。だれも見てないし怒られないんですけど、やらないと戻った時に痛い目に遭うのは自分。やれる範囲でやってました」。

現在は、左右の足の筋力のバランスを整える作業を重ね、仲間とボールを蹴る楽しさをかみ締める。膝の感覚も取り戻しており「全部(フルメニューの練習)に合流した時からが本当のスタート。今は練習をやることが一番。この後しっかり離脱せずにやれれば」と冷静に前を見つめた。

チームは現在、3連勝中で首位を走る。昨季の課題だったスタートダッシュに成功。選手層も厚くチーム内競争も激烈だが、焦りはない。「(危機感は)正直ないです。まだ、そこまで行っていない現状もある。自分が戻ってきて、はい、どうぞ、というチームでもない。しっかりパフォーマンスを出さないと使ってもらえない。そこにしっかり戻れるように日々やるだけ」と着実に復帰ロードを歩むつもりだ。

サッカー人生の中で初めて経験した長期離脱。けがした瞬間や手術の直後は「絶対無理」と復帰が見えなかったが、現在は部分合流までたどり着いた。「絶対に治るといわれていたし、人間の回復力ってすごいなってあらためて感じる」としみじみ。中村の復帰を待ちわびるサポーターのメッセージも心に響く。「そういう人たちのためにも、自分のためにも、しっかりピッチに立ちたい。けがをして、その思いが強くなった。試合に復帰したときどうなるか、分からないですけど。楽しみでしかないです」。常に“中村史上最高”を目標に掲げる。けがを乗り越え、さらにパワーアップした中村が等々力のピッチで躍動する日も近い。【岩田千代巳】

◆中村のけがから練習合流までの経緯 昨年11月2日のJリーグ第30節広島戦で負傷交代し、同22日に左膝前十字靱帯(じんたい)損傷、左膝外側半月板損傷の手術を受けた。全治は約7カ月と診断された。今年1月の宮崎キャンプでジョギングを、2月中旬にはボールを使ったトレーニングを再開。徐々に強度を上げ、今月4日に全体練習に部分合流を果たした。