ヤンさんがいたから-。ベトナム1部リーグのサイゴンFCに完全移籍する横浜FCの元日本代表MF松井大輔(39)は、16年前に出会ったベトナム人を思い返していた。

4日、オンラインでの移籍会見。04年に京都から移籍したルマン(フランス)時代、周囲に日本食の店はなく、毎日のように中華料理店に通っていた。初の海外挑戦。寂しい心を埋めてくれたのは、その店のスタッフだった。

松井 ヤンっていう友達に本当にお世話になって。今度は自分が恩返しが出来ればいいなと。

ヤンさんを通して、自然とフランス人の友人も出来た。その後、ロシア、ブルガリア、ポーランドのクラブに所属したが、あの時の感謝の心は消えない。「日本とベトナムの懸け橋のようになれたらいいかなと」。ヤンさんに“施されたら施し返す、恩返しです”とばかりに新天地を選んだ。

松井 僕たちは島国。違うところに行って、違うものを見ることが大事。経験が財産。失敗しようが、けがしようが、それに対して意義がある。

フランスでは「ルマンの太陽」とも呼ばれた“旅人”。クラブは5日のホーム鳥栖戦後にセレモニーを実施予定で、19日のJ1最終節を待たず日本を離れる。ベトナムの日差しを浴び、サンサンと輝く。ヤンさんの優しさを胸に刻みながら。【栗田尚樹】