今年1月の全日本高校女子サッカー選手権で2連覇を飾った藤枝順心の中村翔(かける)新監督(32)がこのほど、日刊スポーツの取材に応じた。多々良和之前監督(56)からバトンを受け、先月末に就任。全国屈指の名門を率いる決意や、指導者としての心構えを聞いた。【取材・構成=古地真隆】

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-就任を打診された経緯を教えてください

中村氏 全日本選手権2連覇を達成した後、1月末に話をいただいた。これまで築いてきた、藤枝順心の歴史をつないでいきたい。多くの目が向けられるが、プレッシャーをありがたく感じて、楽しめるようにしたいです。

-岩手・盛岡商高サッカー部時代の恩師・斎藤重信氏からも連絡があったそうですね

中村氏 斎藤先生から「大変なことだが、やりがいもあるから頑張れ」と言われました。今でも気にかけてくれています。

-主な藤枝順心の卒業生に女子日本代表MF杉田妃和(ひな、24=INAC神戸)らがいる。他にも数多くのプロ選手を輩出してきました

中村氏 ここがゴールじゃない。どれだけ多くの選手を次のステージに送り出せるかを大事にしている。もちろん勝利を目指すが、勝ち負けだけになってはいけない。重要なのは過程で、自分の分析に目を向けられるようになると、短い期間でも伸びます。

-選手を導く立場として、意識していることは何ですか

中村氏 サッカーに限らず、多くの指導者の方々と情報交換をさせていただいている。自分の考えだけに固執しては、成長につながらない。僕が学び続ける姿を見せれば、自然と選手たちにも伝わると思います。

-選手たちと密にコミュニケーションを取る姿が印象的です

中村氏 大切にしている時間。くだらない話も含めて、たくさんコミュニケーションをとりたい。このやりとりが、互いの成長につながる。悩みがあれば相談に乗りたいし、解決のきっかけになれば良いと思います。

-最後に意気込みを聞かせてください

中村氏 選手たちが「成長したい」と思える環境を整え、サポートしてあげたい。藤枝順心の伝統は「進化すること」。現状に満足せず、常にチャレンジャー精神を持って過ごしていく。1年生も加わりました。どんなチームに育っていくか楽しみです。

◆中村翔(なかむら・かける)1988年(昭63)11月12日、岩手県岩手町生まれ。岩手の沼宮内SSSでサッカーを始める。盛岡商高3年時に全国選手権優勝。国士舘大を卒業後、学校法人藤枝学園が経営する藤枝明誠高に教員採用。17年に姉妹校の藤枝順心高へ異動。同年からサッカー部コーチを務めてきた。保健体育、情報科教諭。家族は妻と3男1女。WEリーグ・サンフレッチェ広島DF中村楓は妹。