サンフレッチェ広島が12日、アウェーでガンバ大阪を2-1で下した。

広島のサポーターの総称を、今季から「ファミリー」と呼ぶようになった。その家族たちはこの夜、敵地でこれほど留飲を下げる白星をつかめると思っていただろうか。

広島は4月7日横浜FC戦以来、7試合ぶり、実に1カ月以上遠ざかっていた勝利を飾った。相手は今季は低迷するとはいえ、優勝候補だったガンバ大阪。その決勝点がすばらしかった。

1-1に追いつかれ、迎えた後半20分、G大阪の右CKの場面だった。広島にとっては失点危機。G大阪MFチュ・セジョンが蹴ったCKを、自陣ゴール前にいたMFハイネルが頭でクリアして、そのドラマが始まった。

MF柏を経由し、左サイドを走るFWジュニオールサントス、右側を走ったMF川辺へとわたり、そのまま右足でズドン。ハイネルから川辺のフィニッシュまで、4人がかかわったプレーはわずか13秒。危機から一転、スーパーゴールが生まれた高速カウンターに、選手らは酔いしれた。

「ボールがジュニオールサントスに流れる前から、(自分の)逆サイドで走ってくると思って、大声で(彼の名前を)呼んだのでいいボールが来た。無観客で呼んだというのは大きい。あとは強く振り抜くだけだった」

川辺いわく、この日が無観客開催だったから、通常の試合では聞こえない声が届いたと説明する。3月に初めて日本代表に入った川辺は、3列目から前線に上がってのゴールが真骨頂。この試合はセットプレーから80メートル以上も走り抜けての決勝点。3月21日大分トリニータ戦以来、最高の今季2点目となった。

城福監督も「絶対負けられなかった。チームの雰囲気も変えたかった。選手が全員で気持ちをつなぎ、勝利の執念を見せられた」と喜んだ。開幕から8戦不敗と好スタートを切った今季だったが、最近6試合は未勝利。主将DF佐々木は「メンタル的に厳しかった」と振り返るほどだ。

川辺は得点直後、FW永井がウオーミングアップしていたピッチ脇に駆け寄り、ゆりかごダンスのパフォーマンスを披露した。9日に次男が生まれた永井を心から祝福した。一丸を築く広島を象徴するような場面だった。

これで通算5勝6分け4敗で9位に浮上した。開幕前、佐々木は「僕らは常にぎらついた気持ちがある」とし「目標は優勝です」と6年ぶりの覇権奪回を誓っていた。次節15日はホームで徳島ヴォルティス戦。ホームでは3月17日清水エスパルス戦以来、白星がない。G大阪を2年ぶりに下した“13秒のカウンター”で勢いに乗り、再び上位争いに加わりたい。【横田和幸】