1年に1度の誕生日。思いの込められた、あまたのプレゼント、豪華な食事、人々の笑顔で特別な1日が彩られる。

祝う側は、主役を盛大に盛り上げる。だが、横浜FCの場合は、ちょっと違う。祝う側も、祝われる側も本気。主役も、全力で盛り上げないといけない。

誕生日の人は、チームみんなの前で、一発芸をしなくてはならない-。クラブには、そんなしきたりがある。

2月26日に54歳を迎えたキングことFWカズ(三浦知良)は、選手の前だけと言わず、報道陣に向けても体を張った。オンラインで行われた誕生日イベントで、エアギターを披露。さらには「ハッピーバースデー トゥーユー ハッピーバースデー ディア ケイスケ クワタ アンド カズ」と、親交のあるサザンオールスターズの桑田佳祐の歌モノマネまで、やってみせ、爆笑のひとときを届けた。下平前監督も、過去にアントニオ猪木のモノマネを選手の前でやったそう。

主役も受け身だけでは終わらない。祝う側も、祝われる側も、全力で笑顔を届ける。それが、横浜FCなのだ。

敵地・広島で行われた第22節。7月11日は、早川知伸監督の44回目の誕生日だった。試合前から各選手が誕生日ゴールを狙うと話していた中、MF小川が決勝弾。チームは今季2勝目を飾り、指揮官にバースデー勝利を届けた。監督に就任してから初の誕生日だったが、早川監督は、クラブのしきたりについて「特にそれは聞いてはいなかった」。淡々とそう答えた。

日頃のオンライン取材でも、真摯(しんし)に受け答えする姿が印象的。そんな真面目が売りの新指揮官だからこそ、どんな一発芸を披露するのか、気にはなるのだが…。試合後には、ロッカールームでバースデーソングを歌ってもらったそう。チームは中断期間前、最後の試合を勝利で飾り、1カ月後の次節に備える。まだ2勝で最下位。チームに上昇気流が見え始めれば、早川監督にも笑顔が出てくるはずだ。プレーする側も、プレーを支える側も-。一丸で盛り上げていくしかない。【栗田尚樹】