セレッソ大阪は19日、J1リーグ戦で歴代最多得点記録(191点)を持つ元日本代表のFW大久保嘉人(39)が、今季限りで現役引退することを発表した。

   ◇   ◇   ◇

性格も実績も生粋のストライカーだった。FWは小学6年で出会った居場所だ。点を取ればヒーロー、負ければ批判の矢面のポジションだが「だからおもしろいしやりがいがある。負けず嫌いにはたまらない!」と話す。批判される方が多いのも現実。強気な発言はあえて自分にプレッシャーをかけるためだ。メンタルは強い方ではないと言うが「批判の中で点を取れば、ほら、と言えますから」とケロリと話していたのを思い出す。

川崎フロンターレでは4年間で90得点。「海外では、けがをして休むとポジションがなくなる」と肉離れなど痛みがあってもピッチに立ち続けた。足裏に痛み止めの注射を打ち「びびって打つまで1時間かかった」と苦笑したこともある。

16年5月のヴィッセル神戸戦も思い出の1つだ。0-1で迎えたハーフタイムに当時の風間八宏監督から「足が痛いのか」と聞かれた。「大丈夫です」と答えると「だったらもっと動いてくれ」と叱咤(しった)された。怒りに火が付き、プラスチックのコップを床にたたきつけロッカールームを出た。鬼木コーチ(現監督)がフォローに来たが、その手を振り払いピッチに出て、後半に2得点。「自分はそうやってパワーが出るタイプ。試合中、見ておけよ、オレの所にこいって。逆にやってやろうと。おもしろいですよね」。どんな状況でもしっかり結果を出すのがスタイルだ。

イエローカードも多く「100枚いかないとね。お父さんから何事にも一番になれ、と言われたから」とジョークを飛ばしたこともある。「ほめられたもんではないけど、それだけ、出場停止があるということ。その中でこれだけ点を取ってるから、どう? って自信持って言える」。悪童のイメージもあるが、根は心優しい。クラブに「サインを下さい」と返信用封筒入りの封書が届くと、「送り返さなかったら罰が当たる」と必ず送り返していた。当時、試合出場に恵まれていなかった後輩のDF板倉滉(現シャルケ)ら若手を食事に誘った。だが、ピッチに立つと後輩にも容赦なく「オレに何人、相手がついていようとオレに当てろ」など要求も欠かさなかった。

3年連続で得点王に輝き「19の時は30までできるのかなと。次の目標は40。40まではやりたい」と話していた。当時のJ1最多得点記録を更新したときは「次は200。名前を残すためにどこまで積み重ねられるか。現役を退いたとき、かみしめるのかな」とも。40歳まで1年早かったが、今まで積み重ねたJ1歴代1位となる通算191得点は、間違いなく、後世に名を残すもの。次なるステージでの輝きに期待したい。【元川崎F担当・岩田千代巳】