今季限りでJ2新潟を退任するアルベルト監督(53)が24日、聖籠町のクラブハウス隣接施設で退任会見を行った。就任から2年。目標としていたJ1昇格を果たすことはできなかったが、情熱と大きな愛情で選手を包み込み、チームにポゼッションサッカーの醍醐味(だいごみ)を植え付けた。会見の終盤には「らしさ」全開の笑顔を見せ、新潟のファンにメッセージを送った。

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「新潟を離れることを決めた。選手、スタッフ、サポーターが私を成長させてくれた。私たち家族を温かく受け入れてくれた皆さんに感謝してます」。

目に涙を浮かべながら始まった会見だったが、最後は“アルベルト節”がさく裂。会場は笑いに包まれた。「新潟のおすしが大好きだし、いつかビッグスワンでサポーターの大声援が聞きたい。また遊びに来るよ」。報道陣と握手を交わし、笑顔で就任からの2年を振り返った。

クラブからは続投要請を受けたが、17日に断りを入れた。「新潟への残留も選択肢にあったが、私は常に挑戦したい性格。最終的に『野心』が私を突き動かした」。来季の去就についての明言は避けたが、指導者としてのレベルアップを決断したと説明した。

20年1月10日の就任会見ではチームの成長を「花」にたとえ「毎日、水をあげることで少しずつ成長する」と目標を設定した。根気よく成長させたチームはポゼッションサッカーとハードワークが融合。今季は開幕から13戦無敗で首位を快走した。中盤戦以降は失速し、J1昇格は果たせなかったが、ここまで18勝を挙げて勝ち点は67を獲得。新潟がJ2に降格の18年から最多勝ち点となる。「チームも選手も確実に成長している。私抜きでも、いいプレーが来年以降もできるでしょう」。

今季最も印象に残ったシーンは第5節ホーム東京V戦。「全てがうまくいき、ここまで未勝利の相手に7-0で勝利。クラブの歴史に残る勝利となった」。ゴールは第9節栃木戦でFW矢村が決めたオーバーヘッドと、第35節秋田戦でFW谷口が放った約50メートル弾を挙げた。「ともに素晴らしいゴールだった」と懐かしむように話した。

残り2試合。最終節の12月5日町田戦が、新潟監督として臨む、最後のビッグスワンでの試合となる。「1つでも多くゴールを取り、勝利をプレゼントしたい」。最後まで、思いのすべてを注ぎ込む。【小林忠】

○…アルベルト監督と並んで会見に出席した中野幸夫社長(66)は「2年間、愛情を注いでよくやってくれた。今季は試合のたびに監督と握手したり、抱き合って喜んだ。こんな1年はなかった」と振り返り、「次のステップでも頑張ってほしい」とエールを送った。後任は未定だが、アルベルト監督が根付かせた攻撃サッカーは継続する方向。「今季をしっかり振り返り、昇格のため、シーズンオフにしっかり準備したい」とも話した。