Jリーグに今季から参入したいわきFCが、初物ずくめのJ3開幕戦で勝ち点1をつかんだ。アウェーで鹿児島ユナイテッドと1-1のドロー。前半4分、右サイドバックのDF嵯峨理久(23)が、チーム第1号となる先制点を決めた。同42分の初失点で同点にされるも、昨季JFL王者として堂々渡り合った。新指揮官の村主博正監督(45)がJ初采配。スタメン11人中8人がJリーグ初出場で、先発の平均年齢も23・64歳と若い。初勝利はお預けとなったが、フレッシュいわきが、確かな1歩を踏み出した。

J3初陣のいわきは、鹿児島県のシンボルとして有名な桜島をバックに、Jリーグ最初の90分を勇敢に戦い抜いた。大半の選手がJ1、2、3含め初出場。メンバー表のJ3通算出場数には遠征メンバー18人中17人に「0」が並んだ。主将のMF山下優人(25)は「こんな大人数の前で試合をした経験があまりないので、試合が始まる前に『やっとJリーグに来たんだな』と実感がわいた」。4832人が来場し、いわきサポーター約60人が見守った開幕戦を、かみしめながらプレーした。

約15秒、電光石火の先制ゴールだ。前半4分、相手ゴールキックからすぐさまボールを回収。パスを受けたMF岩渕弘人(24)が、ペナルティーエリア右にスルーパスを通す。攻め上がった嵯峨が抜け出すと、相手と入れ替わり、切り返してからチーム初シュート。ニアの狭いコースを左足でぶち抜いた。「自分自身、得点が取れたのは自信になった」。控えめに両手を広げ、アシストした岩渕に飛びつくと、仲間から次々と手荒い祝福を受けた。いわきにとって歴史的一戦だった。嵯峨はアップ段階から「ワクワクしていたし、自分の中でニヤついてしまった」と告白。「結果的に1-1で終わったが、開幕戦でチーム全体に硬さもある中、鹿児島の地で勝ち点1を持ち帰れて良かった」と前向きに捉えた。

11年の東日本大震災をきっかけに立ち上がったいわきは、90分間止まらない、倒れない「魂の息吹くフットボール」をコンセプトに34試合を戦う。次節20日は相模原とのホーム開幕戦。嵯峨は「最後の笛が鳴るまでアグレッシブに戦う姿をたくさんの方に見てほしいし、それを体現できるのが僕たちなので、一丸になって戦いたい」。J初勝利を挙げ、ホームで喜びを分かち合う。【山田愛斗】