川崎フロンターレが柏レイソルを下し、3大会ぶり2度目の天皇杯優勝を成し遂げた。延長戦を終えて0-0。PK戦は10人ずつ蹴る死闘となった。

川崎FのMF瀬川祐輔(29)は、移籍してきたシーズンでいきなりタイトルを獲得した。「新加入としては1つの目標だったのでうれしく思います」と素直に喜んだ。

今季序盤はなかなか出番に恵まれなかった。初先発は8月12日のヴィッセル神戸戦。ただ、途中出場でも必ずチャンスを作り出し、6得点を記録して、鬼木達監督からの信頼を勝ち取った。シーズン終盤には人生初の左サイドバックも経験。高いサッカーIQで、チームに替えの効かない選手となった。

この日の相手は古巣・柏だった。そこの意識は特になかったというが、後半19分から途中出場すると、背後への動き出しや球際、運動量でチームを活性化させた。

PK戦では、2人目のキッカーを任された。ゴール左に蹴ったが相手GKに防がれ、思わず頭を抱えた。「ちょっとやっちゃったなという感じ」。笛が鳴り、自分のタイミングではなく走り出してしまい、嫌な予感がした。蹴る直前にヘッドダウンしてしまい、相手GKの動きを見定められなかったという。

しかし、瀬川が蹴る前にGKがゴールラインの前に出ていたとしてやり直しに。「ラッキーだな」。反省点は1本目を蹴った瞬間に理解していた。自分のタイミングで蹴ることだけを意識。2本目は最後まで相手GKを見て、逆を突いた。「いい経験になりました」と苦笑いで振り返った。

控えを多く経験してきたからこそ、試合に出られない悔しさを理解できる。その思いを背負ってプレーした。「タイトルを取ったけれど、ピッチに立てない悔しさを持っている選手はいる。そういう人たちに対して、負けたらより一層思うだろうから、日頃、競争相手として切磋琢磨(せっさたくま)している仲間に感謝しなきゃいけない。その人たちの気持ちも乗った勝利だったと思います」。心優しい瀬川らしい言葉だった。【佐藤成】