<J1:鹿島1-0京都>◇第32節◇21日◇西京極

 史上初のリーグ3連覇を狙う鹿島がアウェーで京都を下し、22日に大分戦を控える川崎Fをかわして暫定首位に立った。前半36分にMF野沢拓也(28)が左斜め45度から鮮やかなミドルシュートを決め、決勝点を奪取。07年に最終節での逆転優勝を導いた同年11月24日の浦和戦で決めたミドルシュートの「再現弾」でチームを3連覇へ前進させた。

 芸術的なゴールが王者鹿島を暫定首位に押し上げた。前半36分だ。左斜め45度、ゴールまで20メートル強。野沢の右足から放たれたシュートは、鮮やかな曲線を描きながら、ポストに当たってゴールに吸い込まれた。「練習でもやってたし、GKが前に出ているのが分かった。イメージ通り」。自画自賛の決勝点だった。

 歓喜に沸くイレブンの中で、踊るようなパフォーマンスを見せた背番号8。「サンバを踊ろうとしたら、アッという間に試合が始まっちゃった」。11月以降のリーグ戦の得点数はクラブ史上首位の13点目。「Mr.クライマックス」と称される男は、おどけながら振り返った。

 奇跡の瞬間を思い出させるゴールだった。07年11月24日、アウェーの浦和戦。引き分け以下で優勝の可能性が消える一戦で、野沢は同じ位置から決勝点を決めた。演出したのが田代、主審が扇谷氏というのも同じ。最終節での逆転Vへつないだ2年前のゴールを再現したかのような縁起の良い一撃に「あの時に似てたけど、今日の(得点の)方がきれいだったね」と笑った。

 通算3勝4敗と相性の悪い西京極、そしてFWマルキーニョスとDF岩政という攻守の柱が出場停止。苦境の中でチームは一丸となった。1年1カ月ぶりのリーグ戦先発のFW田代は前線で高さを生かして起点となり、DF大岩はベテランらしい読みで完封に貢献。「これからは毎試合決勝戦だと思って戦おう」というオリベイラ監督の言葉に奮い立ったイレブンが、貴重な勝ち点3をつかんだ。

 リーグ戦3位以内を確定させ、来季のアジア・チャンピオンズリーグ出場が決まった。だが、最終目標はまだ先にある。野沢は「1試合1試合勝つだけ」と言い切った。川崎Fの結果待ちの状況に変わりはない。だが、3連覇の可能性を信じて残り2試合を勝ち抜くしかない。【菅家大輔】