<J1:G大阪1-0仙台>◇第33節◇26日◇万博

 G大阪が奇跡の逆転Vへ望みをつないだ。今季限りで退任する西野朗監督(56)の「万博最終戦」は、前半25分にFWイ・グノ(26)のヘディングで先制。虎の子の1点を守り抜き、勝ち点を67に伸ばした。引き分けでも「終戦」だった崖っぷちで勝利。首位柏がC大阪と引き分けたため優勝の可能性が残り、勝った2位名古屋とともに勝ち点2差に3チームがひしめく大混戦となった。G大阪は最終節12月3日の清水戦(アウスタ)に勝ち、6年ぶりの優勝の可能性に懸ける。

 こみ上げる感情は胸にしまい込んだ。ピッチサイド最前列には、いつものように腕組みして立つ西野監督がいた。G大阪を指揮して10年。今季限りで退任する男にとって、最後のホーム万博だ。G大阪でのリーグ戦通算171勝目の瞬間、膝に両手をついて笑った。

 「僕個人的なあいさつに絶対しちゃいけないと思った。自分だけじゃないですし」。哀愁は漂わせない。ホーム最終戦の場内あいさつでも、別れの言葉はなかった。「勝ったあとの幸せに包まれた雰囲気を共有できた」とサポーターに感謝しながら「来年もガンバを応援して下さい」。客席からは多くの花束が贈られた。前夜は宿泊先で「ホームのホテル(前泊)も最後だな…」と思ったというが、最後までダンディ-に振る舞った。

 西野監督

 普通にしようと思った。でも状況が状況で、みなさんと同じ空気をここで共有できることはできない。1つ1つが最後。自分の中では1つ1つをかみしめていました。

 指揮官の熱き思いは届いた。勝たなければ終わりの戦いは前半25分、FWイ・グノがリーグ最少失点の仙台ゴールをこじ開けた。相手の逆襲は必死に体を寄せ、懸命に守った。再び逆転優勝圏内に突入し、普段は温厚なMF明神主将もマイクを持ってほえた。

 明神

 他会場の結果を知ってますか!

 最高のシナリオができました。最終節に必ず勝って、ミラクルを起こします!

 逆転Vは清水に勝たないと始まらない。そのうえで柏と名古屋が引き分け以下という条件が必要だ。さらに得点源のFWラフィーニャが警告累積のため出場停止と取り巻く環境は厳しい。だが、諦めたらそこで終わり。6年前も最終節に奇跡の逆転優勝が待っていた。西野監督は「それでも戦いは続く。ラスト1ゲームありますから」と力を込めた。別れの涙なんていらない。歓喜の涙を流すために西野ガンバは最後まで全力で戦う。【近間康隆】