俊輔が、決める。J1首位の横浜は今日30日、ホームの日産スタジアムで9年ぶり4度目のリーグ優勝が懸かる新潟戦に臨む。元日本代表MF中村俊輔(35)は29日の横浜市内で最終調整。居残り練習で30分以上もボールを蹴り続け、大一番への準備を整えた。平常心と「黄金の左足」で、自身初のJリーグ年間王者の座をつかみ取る決意だ。

 無心でボールを蹴った。中村は約1時間の全体練習を終えると、壁を設置してFK練習。すべて左足で19本蹴って、4本がゴールネットを揺らした。次はトラップやドリブルからのシュート練習。ちょうど50本打ち終わると、最後にPKを2本だけ蹴り、ゆっくりとピッチを引き揚げた。普段の淡々とした口調で、大一番への意気込みを語った。

 中村

 優勝ムードからは逃げられない。プレッシャーを受けつつ、いかに1人1人が普段のサッカーができるか。外は騒ぐけど、ピッチの中では自分たちの役目をまっとうするだけ。

 3月の湘南との開幕戦、芸術的FKで先制点を決めた。今季のチーム第1号は、クラブ新記録の開幕6連勝という快進撃の号砲だった。自身初のシーズン2ケタ10得点で、1年通して大黒柱として活躍してきた。

 セルティック時代の07年4月22日キルマーノック戦では、後半ロスタイムに決勝のFKを決めて連覇を果たした。「セルティックでぶっちぎりで優勝した経験はでかい。チームが1つになることは、なかなかない。若手もいい経験になると思う」。00年に横浜でステージ優勝を経験したが、クラブが年間優勝を果たした03、04年はレジーナ(イタリア)にいた。自身初の年間王者のタイトルは、もう目前だ。

 FK弾を決めれば、CKも含むプレースキックからの直接ゴールが、日本代表や欧州時代も含めて通算55得点となる。これは、元イングランド代表ベッカムの持つ65点に1歩近づく数字だ。「セットプレーになったら、直接かどうかにかかわらずゴールにつながるボールを出す。それが自分の役目だと思う」。最後に、「普段の試合と変わらないけど、会場に行ったら違うかな」と、少しだけ高ぶる胸の内をのぞかせた。中村で始まった戦いは中村が締めくくる。【由本裕貴】

 ◆中村のプレースキック

 10月27日大分戦で、MF遠藤(G大阪)を抜くJ1歴代最多の通算17得点目の直接FKを決めた。97年5月3日のFKによる初ゴールからFKを決めた試合は11勝3分け3敗で、昨季からは4勝2分けと無敗だ。CKを含むプレースキックで直接ゴールした54ゴールの内訳は横浜23、レジーナ4、セルティック15、A代表8、五輪代表3、ユース代表1。ちなみに中村が目標としていたベッカムは65点で、マンチェスターU29、Rマドリード14、LAギャラクシー12、プレストン2、ACミラン1、イングランド代表7。

 ◆今日の横浜の優勝決定条件

 横浜(勝ち点62)は新潟戦に勝てば無条件で優勝。引き分けても、2位浦和(同58)と3位広島(同57)がともに引き分け以下で優勝が決まる。横浜は負けても、浦和が負け、広島が引き分け以下、4位C大阪(同56)-5位鹿島(同56)が引き分けなら、最終節を残して横浜の優勝が決まる。優勝の可能性は勝ち点62に届く5位鹿島まで。