日本には守護神がいる。ドイツ戦の奇跡的な勝利の立役者、GK権田修一(33=清水)がコスタリカ戦でも最後の砦(とりで)として日本を守る。ドイツ戦の活躍ぶりで一部で「権田防衛大臣」と呼ばれるまでになったが、浮き沈みの激しいサッカー人生だった。その経験も生かし、相手のシュートをストップする。

ドイツに続き、コスタリカも、不屈の魂ではね返す。GK権田が「神セーブ」を再現し、日本を支える。「新しい景色(=8強以上)を見るためにここに来ている」。大金星を挙げた23日ドイツ戦の後、開口一番そう話した。

ドイツ戦は、ジェットコースターのような試合展開だった。前半31分、ペナルティーエリア内でドイツDFを倒した。PKを決められ先制点を献上。それでも崩れなかった。0-1の後半25分、ホフマンのシュートからなんと「神セーブ4連発」。これで日本に流れを引き寄せ、逆転劇への流れを整えた。

1度はどん底も見た。だからこそ、苦しい試合展開も、乗り越えられたのかもしれない。東京でプロになり、順調に成長を遂げた。12年ロンドンオリンピック(五輪)では正GKで4強入りに貢献。14年ブラジル大会で出番はなかったが、初のワールドカップ(W杯)も経験した。しかし、東京で背番号1を背負い、活躍していた15年。オーバートレーニング症候群を発症した。普段の練習から妥協を許さない一本気な性格。知らないうちに、自らの心身に負担をかけていた。

「1度は引退も考えた」という。そんな日々を乗り越え、海外移籍も経て、再びつかんだ8年ぶりのW杯切符。1大会を挟んで復帰した選手は、権田が初めて。ベテラン川島、年の近いシュミットと3人で臨む大舞台。支えてくれる2人にも、特別な思いがある。

「メディアを見ると、ダン(シュミット)を使え、使えと書いてあるのも知っている。ずっとライバルがいる。僕が若い時に永嗣さん(川島)にとって、そういう存在になれなかった。年があがってしまったけど、ダンのおかげで、お互いライバルだけどいい関係を築けている」

強固な絆で結ばれた3人、そしてチームは、少しのことでは動じない。支えは、最後方の守護神の経験と強い心。ここからが本番。「試合を重ねていったら、イレギュラーに対応する力も大事。予選を通じて、いろんなことに対応してきている。最後までやっていきたい」。何が起こっても乗り越えるだけ-。権田の闘志は消えない。【磯綾乃】