【ドーハ(カタール)=29日】元スペイン代表MFでバルセロナのシャビ監督(42)は、やはり母国の決勝進出を予想した。日本の運命が決まるスペイン戦を前に、アディダス社主催の世界各国メディアによる合同インタビューに「潜入」した。レジェンドは、日本の強さを認めた上で、MF久保をキーマンに挙げながらも、スペインが1歩先を行っていると言い切った。【取材・構成=栗田尚樹】

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取材時間は約10分。計10カ国15媒体がシャビ監督のインタビューに集まった。日本メディアはただ1人。貴重な場に潜入した。

スペインの決勝進出を問われたシャビは、胸を張って言った。「ルイスエンリケ監督と選手たちを信じている。好印象を持っている。彼らは全てを備えている。才能もあるし、フィジカル的にも戦術的にも素晴らしい。もちろんW杯は簡単ではないけど、スペインは期待できる」と明言した。

“予言”がこわい。取材は現地26日の昼すぎから行われた。同日夜に、アルゼンチン-メキシコ戦が控えていた中でメッシの活躍を問われると「メッシは、試合が大きくなればなるほど大活躍する選手。彼は今日の試合で違いを見せると思う」と言った。この占い? 通り、メッシは先制点を挙げアシストもマーク。2-0の勝利に貢献し、初戦でサウジアラビアに敗れた嫌な空気を振り払った。

他国の記者の圧に押されながら、日本代表について尋ねた。

シャビ ドイツ戦の勝利にみんな驚いているようだが、僕は驚かなかった。前からアジアのチームには注目しているし、日本代表の能力を把握している。日本には素晴らしい才能を持ったプレーヤーが数多くいるし、どの対戦国を相手にしても勝つ可能性があると思う。

「警戒する選手は?」

シャビ タケだ。でも、やはりチームとしての強さに注目している。守備面でよく組織されていて、(ドイツ戦の)後半は高い位置から激しいプレスをかけ、前半はとてもよく守った。カウンターアタックはとても速く、とても強いチームだと思う。

本心か、リップサービスか…。淡々と話す表情からは読み取れない。ただ、やはり、スペインの強さに対しては、信じて疑わなかった。

「優勝国は?」

シャビ サッカーの世界では予想は難しい。でも私が気に入ってるのはブラジル、フランス、アルゼンチン…、そしてスペインだ。自分の意見では、この4チームが他国よりも1歩先に行っている。

日本の名前はなかった。“予言者”シャビの言う通りなら-。せわしなく終わったインタビュー。会場を後にするシャビの不敵な笑みが、気になった。

◆シャビ・エルナンデス 1980年1月25日、バルセロナ郊外のテラッサ生まれ。91年にバルセロナの下部組織に入り、98年にトップ昇格。「バルセロナの心臓」と呼ばれ、名門の中盤を支えた。99年ワールドユース(現U20W杯)では決勝で日本を破り優勝。00年11月のオランダ戦でスペイン代表デビュー。10年W杯南アフリカ大会優勝。15年にカタール1部アルサドに移籍。引退後、アルサドで監督を務め、21年シーズンからは古巣バルセロナの監督に就任した。国際Aマッチ通算133試合13得点。170センチ、67キロ。

○…元スペイン代表で、レアル・マドリードなどでDF、守備的MFとして活躍し、W杯ロシア大会でスペイン代表監督も務めたイエロ氏(54)は、日本がスペインに勝つ確率を問われると「ハハハ」と笑い「サッカーだから分からないよ」と、けむに巻いた。同じく元スペイン代表FWで、J1神戸でのプレー経験のあるビジャ氏(40)は「分からないが、どこの国だって、スペインに勝つ確率はある」と真剣な表情でうなずいた。同国1部リーグでプレーする久保については「彼は素晴らしいプレーヤーだ」と称賛。こちらも果たして本心か、リップサービスか…。