FIFAワールドカップ(W杯)日本代表GK権田修一(33=清水エスパルス)が、世界に1つだけのグローブで“防衛大臣”の任務を遂行する。

守護神が愛用するグローブは、株式会社「ユナイテッドスポーツブランズジャパン」のメーカー「uhlsport(ウールシュポルト)」が手がけるもの。取材に応じた担当の織茂(おりも)徹也さんは「権田選手のこだわりは強いですね」とうなずく。

身につけているのは「360度リフレックス」と呼ばれるタイプ。最大の特徴は、手のひら(パーム)の面積が大きい点だ。ほとんどの日本人選手が指先のフィット感を重視する中、権田は面の大きさにこだわっている。

「大きな面を操作するのは難しいですが、権田選手は捕る技術が前提にあるので、使いこなせています」

高い技術力は、FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会でも発揮。1次リーグのドイツとの初戦では、18秒間で4度の好セーブを連発した。今大会は青色のラインが入った特別仕様のグローブで戦っている。

出会いは、19年1月にJ1サガン鳥栖からポルトガルのポルティモネンセへの移籍を発表した頃。それまでは大手ブランドのグローブを使用していたが、2度目の海外挑戦を機に、複数のメーカーと相談して、新調を検討していた。

迷う権田へ、織茂さんは伝えた。「これはフランスのロリス選手も身につけていましたよ」。360度リフレックスは、18年ロシア大会王者の守護神も愛用していた品だった。

「これ、いいですね」

興奮した様子で手に取った。他のグローブを見る時とは、目の色が変わっていた。それ以来ずっと、“相棒”との旅は続いている。

道具へのこだわりから、実直な人柄も透けて見える。

「他の選手なら『これでいいです』で終わるところも、何度もきっちりと確認をされます」

気になる点があれば、具体的な要望を欠かさない。ブランドの発展を願い、「御社にとって必ずプラスになります」と進言もいとわない。

「とても助かっています。そういう姿勢がサッカーにつながっているのかもしれません」

ピッチの内でも、ピッチの外でも。権田は真摯(しんし)な姿勢を貫いている。【藤塚大輔】