モロッコが歴史をつくった! FWネシリ(25=セビリア)のゴールで、1-0でポルトガルを撃破。アフリカ勢として初めてW杯で4強に入った。値千金の決勝点は身長188センチのネシリが宙を舞い、頭でたたきつけた豪快弾。GKのパンチングのその上をいく打点の高いヘディングに、ポルトガルのロナウドもおもわず驚きの表情を浮かべた一撃だった。

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ロナウドのお株を奪う、滞空時間が長く、打点の高いヘディングだった。0-0の前半42分。左サイドバック、アティアトアラハのふわりとしたシンプルな左クロスにネシリが渾身(こんしん)のジャンプ。頭で力強くたたきつけたシュートは、ワンバウンドしてネットに突き刺さった。この瞬間、テレビの画面が相手ベンチのロナウドを捉えると、心底驚いた表情を浮かべていた。

この一撃に世界が沸いた。ネシリの頭はGKのパンチングより高く、お尻はDFルベンディアスの顔と同じ位置だった。インターネット上では「どのくらいの高さなんだ?」「ロナウドより高い」「史上最高の高さだ」などという書き込みがあふれた。W杯公式放送局のビーイン・スポーツはSNSにシュートの際の写真を掲載。ネシリの頭部から地面までが2・78メートルだったとする矢印を合成した。

その真偽は不明だが、豪快なシュートがアフリカ勢として初のW杯4強をもたらした。レグラギ監督も「アフリカ、そしてアラブの人々がエネルギーをくれた。新たな歴史を刻むことができた。試合の終盤には感情がこみ上げ、涙が出てしまった」と喜んだ。

ネシリはプロデビュー以来、一貫してモロッコと海を隔てたスペインでプレーする大型FW。マラガ、レガネスを経て加入したセビリアでは20-21年シーズンに18点をマークしてチーム得点王になり、その前年には欧州リーグ優勝も経験した。そしてまた1つ、自らの経歴に勲章を加えた。

この日はモロッコのサポーターが大挙して訪れ、会場のアルスママ競技場を4万4198人のファンが埋め尽くした。その声援が力となった。フランスとの準決勝でもネシリ、そして代表チームを力強く後押しする。

◆ユセフ・エン・ネシリ 1997年6月1日、モロッコ・フェス生まれ。188センチ・73キロのFW。モロッコ国王のムハンマド6世が設立したサッカー・アカデミーなどで力を磨き、16年にマラガのBチームに入団。マラガのトップチーム、レガネスを経て20年1月からセビリアでプレー。スペイン1部では176試合で45点をマーク。モロッコ代表では55試合で17得点している。

▼記録メモ モロッコがアフリカ勢初の4強入りを果たし、史上25カ国目の準決勝進出チームとなった。今大会の4強は欧州2、南米1、アフリカ1。欧州と南米以外のチームがベスト4は、02年日韓大会の韓国以来5大会ぶり。ホスト国以外では第1回の30年ウルグアイ大会の米国以来、92年ぶり2チーム目。