フランス代表FWキリアン・エムバペ(23=パリ・サンジェルマン)が3ゴールの活躍で今大会得点数を「8」に伸ばし、メッシを抑えて得点王に輝いた。W杯決勝でのハットトリックは、ハースト(イングランド)が66年大会・西ドイツ戦で達成して以来、56年ぶり2人目。試合はPK戦の末に敗れ、準優勝に終わったが、エムバペは歴史に名を刻んでスタジアムを後にした。

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個人としてはメッシにも負けていなかった。エムバペは2点を追う後半35分にPKを決めると、1分後、チュラムとのワンツーで左サイドからペナルティーエリアに進入。返ってきたパスを体を倒しながら右足ボレーでファーサイドに突き刺した。同点弾に雄たけびを上げると、スタンドの仏マクロン大統領も両手を振り上げてガッツポーズ。8万8966人を集めたルサイル競技場は一瞬にして興奮のるつぼとなった。

大会アンバサダーの元イングランド代表MFベッカム氏は「キリアンがボールを持つと、いつでもスタジアムがエネルギーであふれる」という。その言葉通り、延長戦でもエムバペがボールを持つたびに、何かやってくれるのではという期待を込めた大歓声が起こった。

再び1点をリードされた延長後半13分にはこの日3点目となるPKを迷うことなくゴール左に蹴り込んだ。W杯決勝でのハットトリックは史上2人目の快挙だった。

PK戦でも1人目としてキックを成功させた。2、3人目が失敗して準優勝に終わった。尊敬する「王様」ペレ氏のようにW杯デビューから連覇を成し遂げることはできなかった。それでも今大会堂々の8ゴール。7点のメッシを抑えて得点王に輝いた。閉会式の最中、ずっと浮かない表情を浮かべていたが、12月20日の誕生日を迎えてもまだ24歳。リベンジのチャンスはこれから幾度となく待っているはずだ。

フランス代表のデシャン監督は「キリアンは大会に足跡を残した。残念ながら彼が望んでいた(優勝という)形ではなかったけど」と話し、マクロン大統領もピッチで同FWの肩を抱いてなぐさめた。この日の悔しさを糧にして、また一回り大きくなった姿が見られるのは間違いない。

エムバペはこれでW杯通算12得点。ペレ氏が4大会で決めた歴代6位の記録に並んだ。4位メッシにもあと1点に迫った。フランス代表のチームメートで、同国通算最多得点記録(53点)を持つジルーは「彼(エムバペ)はすべての記録を塗り替えると思う」と若きエースに期待を込めた。

▼エムバペの記録メモ  W杯決勝でのハットトリックは66年大会のハースト(イングランド)以来、56年ぶり2人目。18年大会決勝の1点と合わせ、決勝での通算4得点はペレ(ブラジル)ジダン(フランス)らの3得点を抜いて史上最多となった。2大会の決勝で得点したのは、58、62年のババ(ブラジル)58、70年のペレ(ブラジル)74、82年のブライトナー(西ドイツ)98、06年のジダン(フランス)に次いで史上5人目。フランス選手の得点王は58年大会のフォンテーヌ(13得点)以来2人目。

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