FIFAランク上位の優勝候補が出遅れる中、ベルギーは万全だ。圧倒的なタレントの力で2連勝。計8ゴールを奪って、1次リーグ突破を確実にした。爆発的なスピードと高度なテクニック、高さもある。1次リーグ最終戦はイングランドが相手だが、この勢いで1位突破も濃厚だ。

この試合2点目を決めたE・アザール(中央)はチームメイトに祝福される(AP)
この試合2点目を決めたE・アザール(中央)はチームメイトに祝福される(AP)

 前回のブラジル大会、ベルギーは新鮮だった。12年ぶりの出場も前線はタレントぞろい。E・アザール、デブルイネ、ルカクら攻撃の中心にGKクルトワも20代前半の若手で「ダークホース」と言われた。準々決勝で「宿敵」アルゼンチンに敗れたが、久々に「赤い悪魔」の復活が見られた。

 4年前の若手は成長し、今大会は「優勝候補」とまで言われる。圧倒的な強さで欧州予選を突破し、その間には初めてFIFAランク1位にもなった。守備の不安は否めないが、それを補う攻撃力が魅力だ。

 思い出すのは、ベスト4入りした86年メキシコ大会だ。12年ぶりに出場した82年大会で、いきなり1次リーグを突破した。GKプファフ、FWクーレマンス、DFゲレツら主力が4年間で成長し、2度目の大会となった86年は若き天才MFシーフォも加えて豪快な攻撃サッカーを披露した。

 世界から取り残された間に育った若手で12年ぶりのW杯出場、その選手が4年間で成長して好成績-。歴史が繰り返すなら、今大会のベルギーは楽しみだ。強豪相手に守備が耐えられるかは疑問もあるが、優勝は無理でもベスト4ぐらいまでならいくかもしれない。

 どの代表チームにも歴史がある。ブラジルやドイツは毎回優勝候補にあがるかもしれないが、アルゼンチンでもフランスでもスペインでも、雌伏の時を耐えて育成や組織を見直して再び世界の頂点を狙う位置に戻る。今は、イタリアがじっと復活の時を待っている。その繰り返しが、世界のサッカー、W杯の歴史だ。

02年W杯、ベルギー戦で同点ゴールを決める鈴木隆行(2002年6月4日撮影)
02年W杯、ベルギー戦で同点ゴールを決める鈴木隆行(2002年6月4日撮影)

 ベルギーは02年日韓大会を最後に前々回大会までW杯から消えていた。日本は98年フランス大会から出続けている。ただ、成績は1次リーグ敗退と16強の繰り返し。低迷がない分、急な浮上もない。H組の日本が1次リーグを突破すれば、G組の「優勝候補」ベルギーがベスト8をかけた対戦相手になるかもしれない。