【ゼーフェルト(オーストリア)4日(日本時間5日)】プラチナ世代の星、日本代表MF宇佐美貴史(26=デュッセルドルフ)が左MFで覚醒する。4-2-3-1で臨んだ紅白戦で主力組入り。左MFから、トップ下のMF本田らと連係を確認した。西野朗監督の“申し子”は、もう「宇佐美=ドリブル」のイメージだけではない。世代交代の旗手が、初のワールドカップで進化を遂げている。その理由を探った。
宇佐美は顔を上げて周囲に目を配った。4-2-3-1で臨んだ紅白戦。左MF宇佐美の周りにはFW大迫、MF本田、大島らがいた。本田にボールを預けて自身は抜け出す。細かいパスワークで崩していく連係は今の宇佐美の真骨頂だ。
「1本のパスにアイデアやイメージを持つこと。イメージを共有できれば、1本のパスで相手をはがせるし、パワーを使わない」
こだわるのはパス。宇佐美といえば、独特のリズムで相手を切り裂くドリブルを思い浮かべる人も、多いのではないだろうか。10代から年代別代表で活躍し、プラチナ世代の象徴とも呼べる存在。代名詞は個人での打開力だった。G大阪ユースから高2でトップ昇格した時も、体の線は細かったが、前線への推進力は抜群。当時すでに、西野監督からも評価されていた。
だが「天才」「神童」「至宝」と呼ばれた宇佐美に、転機が訪れた。昨夏移籍したデュッセルドルフでは、今年から右MFを務めることが増えた。前線ならどこでもこなせるポリバレント(多様性)な宇佐美だが、右サイドから見る景色は違った。左サイドだと相手DFの体の向きは半身(はんみ)の状態だが、右サイドだと相手DFの体は正面を向いていた。「これ、ぶっちぎれんのかな」。不安に思うと同時に、脳裏には複数の選択肢が浮かんだ。
「スピードにめちゃくちゃ自信があるわけじゃない。仕掛ける意識が少ない分、シュート、クロス、連係、パスで崩してDFの背後で受けようとか、バリエーションが出てきた」
これが宇佐美の進化の理由。左サイドで少なかった選択の幅が一気に増えた。象徴するのが2月23日、レーゲンスブルク戦の得点。カウンターから、相手2人にマークされながらDFの背後を狙い、DFを抜ききらずにループシュートでゴールした。本人は「左やったら走るのちょっとサボっていたかも」。動きだしや連係への意識が高まった。
新しく得た武器は左サイドでも生きる。もちろんドリブル突破も健在だが「右でやっていた時のイメージを左でも持ってやろうと思う。生かし生かされるボールの回し方ができれば」。今の宇佐美が左MFにいれば、引き出しから何が出てくるか分からない。プラチナ世代の星が、完全に覚醒した。【小杉舞】



