【インスブルック(オーストリア)13日】日本代表MF香川真司(29=ドルトムント)が完全復活した。約8カ月ぶりに先発した前日12日のパラグアイ戦で1得点1アシストに1起点。左足首の負傷後、4カ月ぶりのフル出場で3得点に絡んだ。19日のワールドカップ(W杯)初戦コロンビア戦(サランスク)まで1週間を切り、MF本田とのトップ下の先発争いは最終局面へ。チームはこの日、ゼーフェルト合宿を打ち上げ、インスブルック空港からベースキャンプ地のロシア・カザンへ飛んだ。

 パラグアイ戦を終え、宿舎に戻った香川がツイッターを更新した。日本時間13日未明。「まだ本番ではない。ここからが大事だと思います」。パラグアイ戦で結果が出たからこそ、余計に本大会へ神妙になった。

 前日はラストチャンスをつかんだ。トップ下の序列は本田優位。「バックアップ」(西野監督)の立場で迎えたが、後半に乾の同点ゴールをお膳立て。続けてV弾もアシストした。ロスタイムには代表通算30点目を右足で。左足首負傷が長引き、2月2日ケルン戦以来となるフル出場。試合最終盤のドリブルでかわしてからのゴールは、復調を印象づけるのに十分だった。

 派手なシュートミスもあったが、一時の落選危機からV字回復した。「確かに3カ月間、試合はしていなかったけど、トレーニングに集中してきた。それは今週も来週も同じだし、決して気は抜けないし、楽観的にもなれない」。脳裏には4年前。初出場のW杯ブラジル大会を控え、直前の米国合宿で2戦2発と躍動した。ところが、本大会は無得点に先発落ち。1勝もできず散った。「前回は開幕前にやれる(と思ってしまった)ところがあった。引き締めて、いい準備をしないといけない」。この反省がツイートに込められた。

 一喜一憂を表には出さないが、盟友には好転が見て取れた。DF長友は「試合後、風呂で真司と2人で話したんです。けがで試合に出られなかった時は表情がさえなかったけど、ようやく彼本来の笑顔が戻った。うれしい」。プレーだけでなく、初戦1週間前に10番の精神が整いつつあることを代弁した。本田との定位置争い最終章も無心で迎えるが、間違いなく状態はいい。西野監督は選考で頭をかきむしることになった。

 日本が南米勢に勝ったのは、10年のアルゼンチン戦(1-0)以来8年ぶり。その中心に香川がいた。コロンビア戦を前に吉兆の白星をつかみ、勇躍、ロシアへ乗り込んだ。【木下淳】