エジプトFWモハメド・サラー(26=リバプール)が失意のままロシアを去った。2試合2得点とチームをけん引したが、全敗で1次リーグ敗退。サウジアラビア戦では前半22分に先制点を決め、マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれたが、笑顔はなく無言。「夢だった」ワールドカップ(W杯)は、ほろ苦いものとなった。

 今季プレミアリーグで得点王に輝いた実力に加え、努力家で謙虚な性格と、ひげを生やした外見がクールだと国内外で人気に。地元カイロ北西部のナグリグ村にはサラー全額出資の病院や集会所があり、住民たちは敬愛している。実家にもメディアが押し寄せ、同じく優しい性格で取材を断れずに疲弊する家族を、見かねた近所の住民たちが独自の取材規制で守る。

 第3戦の相手サウジアラビアでも、イスラム教の聖地メッカの副市長がムスリムの象徴としてサラーに土地の一部の贈呈を発表。大会中に最終調整したチェチェン共和国では政治利用されたことに不満を感じ、代表引退を報じるメディアまであった。その影響力はサッカーの枠を超えていた。

 自身が欠場した第1戦を落とすと、第2戦でも敗れ、早々に敗退が決定。クペル監督は「彼はよく戦った」とねぎらったが、28年ぶりに出場した母国を早期敗退させた失望は、あまりに大きかった。