【ロストフナドヌー(ロシア)2日(日本時間3日)】歴史を塗り替えることはできなかった。日本(FIFAランク61位)が決勝トーナメント(T)1回戦でベルギー(同3位)に2-3と惜敗した。後半3分、MF原口元気(27=ハノーバー)が右足で先制ゴールし、同7分にMF乾貴士(30=ベティス)がペナルティーエリア外からのミドルシュートで追加点を挙げた。だが、その後連続失点で同点とされると、ロスタイムにカウンターからMFシャドリに勝ち越しゴールを浴びた。02、10年に続いて3度目の挑戦となった8強の壁をまたも打ち破ることはできなかった。

 夢が散った。日本代表の西野朗監督(63)が、日本サッカーの歴史を塗り替えることはできなかった。つかみかけた史上初のワールドカップ(W杯)ベスト8進出の夢は、後半ロスタイムに打ち砕かれた。FIFAランキング3位の強豪ベルギーに2点先制したが、力で押し切られた。02年日韓大会、10年南アフリカ大会で阻まれた8強の壁は、相変わらず高かったが、過去の2回よりは可能性を感じさせた。

 終了のホイッスル後、無言でピッチを見つめた指揮官は「うーん、これがW杯の怖さですね。世界に比べてすべてが足りないと思うけれど、でもわずかだと思います」。インタビューを受ける途中、込み上がってきた悔しさを抑えられず、目を真っ赤にしていた。

 就任から約3カ月。わずかな期間で、西野監督は日本の強さ、たくましさを世界に示した。王者ドイツも、あのメッシとロナウドも、スペインまでも敗れ去ったW杯の同じ舞台に日本はいた。その先頭に白シャツ、開襟スタイル、いつものダンディーないでたちの指揮官がいた。

 1次リーグ突破のかかったポーランド戦では、先発を6人も代えた。終盤には攻撃を放棄。0-1での負けを受け入れ、他力での突破を願い、実現させた。大ばくちに勝ち、無類の勝負勘を発揮してきた。この日は前半は耐え、後半に畳みかけ応戦。コロンビアとの初戦、セネガルとの第2戦で勝ち点を奪った不動の11人を並べて、また歴史的な勝ち点をつかみかけていた。

 過去2度の挑戦とは違った。第3戦のメンバー入れ替えで、11人の過半数がフレッシュさをもって大一番に臨むことができた。1次リーグ突破の16強ではなく、最初からターゲットは8強。前日の公式会見では「トーナメントにフレッシュな形で全体が入るためにも(3戦目の先発は)自信を持って送り出しましたし、疲弊もしていないいい状態で迎えられる」と自信ありの口ぶりでもあった。

 相手は確かに強かった。2点を失うと、一気にトップギアにチェンジし、猛攻を仕掛けてきた。指揮官は「本気のベルギーがそこにあった」。それでも吉田や昌子、長友、酒井宏、長谷部らが体を投げ出して必死にシュートをブロックした。2戦目まで不調だったGK川島も、相手シュートをはじき続けた。それでも最後は、相手が一枚上だった。

 西野監督はこの試合で、日本サッカー協会との契約は一区切りとなった。今後、日本協会から続投要請を受ける可能性もある。「3点目を取るチャンスはあった」と振り返った指揮官は、もう1度日本代表を率いてチャレンジできるか。惜しまれながら、西野ジャパンが今大会の幕を閉じた。