【カザン(ロシア)4日】日本代表の次期主将に期待されるDF吉田麻也(29=サウサンプトン)が、涙で4年後への決意を語った。約8年間主将を務めてきたMF長谷部誠(34=フランクフルト)が今大会を最後に代表引退を表明。3日に取材対応した吉田は「引っ張っていかないといけない」と涙を流して決意を口にした。ベスト16に終わった日本代表は、モスクワを経由して今日5日に帰国する予定。

 吉田は涙を止められなかった。目を赤く腫らしたまま現れた取材エリア。淡々と取材に応じていたが「長谷部」という言葉を聞いた途端、涙腺が崩壊した。代表引退を決意した主将への思いを聞かれ「本当に素晴らしい主将で…」と話すと、言葉を続けられなかった。約1分間の沈黙。上を向いて何度も鼻をすすった。

 「7年半、彼と一緒にやってきたけど、あれだけチームのことを考えてプレーできる選手は少ないと思う。ずっと彼を見て、彼の姿勢から学ぶことがたくさんあった。この大会が終わればハセさん(長谷部)だけじゃなくて、今まで長く一緒にやってきた選手とやれなくなる覚悟はあったので、分かってはいたけど寂しい」

 主将の重みはよく分かっていた。昨年3月のワールドカップ(W杯)アジア最終予選UAE戦で代役で主将マークを巻いた。チームは勝利したが、主将として引っ張る大変さを痛感した。「どうあがいても長谷部誠にはなれない」。3大会連続でW杯の主将を務め、2度の決勝トーナメント進出を果たした長谷部の偉大さを吉田が一番よく理解していた。

 後継者の最有力候補は吉田だ。それは自身でも感じていたことで「決めるのは監督」としながらも「自分のスタイルで代表チームを引っ張っていかないといけない。なかなか、ああいう選手(長谷部)の後(主将を)やるのはやりづらいと思うので、誰かやってくれないかな」と笑い飛ばした。長年支えてきた長谷部らの代表引退で一時代が終わりを迎える。4年後へ世代交代含め、新しい日本代表になる。そのチームを吉田がけん引しなければならない。

 日本の過去最高となるベスト8へ、また挑戦が始まる。「立ち止まってはいけない。ベスト16に行ったことで満足してはいけないし、コロンビアにしか勝っていないから。国際舞台で勝つために、どうすればいいか考えなければいけない」。新生日本代表を担う涙の誓い。4年後に必ずつながるはずだ。【小杉舞】