フランス国内カップ戦「フランス杯(クープ・ドゥ・フランス)」7回戦が13日に行われ、FWオナイウ阿道(26)が所属する2部トゥールーズ、DF植田直通(27)の2部ニームがともに勝利。8回戦へコマを進めた。

この大会は世界最大のトーナメントとも言われており、なんと8000以上のチームが参加する。7回戦に勝った88チームが8回戦を戦って44チームにしぼられ、そこにフランス1部20クラブが加わって、ようやく「ベスト64」となる。

実はフランス杯は同国サッカー連盟(FFF)に登録してあるすべてのクラブに参加資格がある。そのため厳密に言うと国内だけでなく、フランスの海外県・海外領土のクラブも出場する。海外県・海外領土にはカリブ海に浮かぶマルティニークやブラジルの北に位置するフランス領ギアナ、南太平洋のフランス領ポリネシア、ニューカレドニアなどがある。

13日に行われたフランス杯7回戦に、はるばる約1万6000キロ離れたタヒチ島からやってきたASベニュスが出場した。タヒチ島は仏領ポリネシアの一部で、ASベニュスは普段はタヒチリーグでプレーする。

タヒチ島ではタヒチ杯というトーナメント大会が開催されており、優勝チームにはフランス杯7回戦からの出場権が与えられる。そのため20-21年シーズン・タヒチ杯優勝チームのASベニュスが今大会に登場することになったのだ。

ASベニュスのサミュエル・ガルシア監督はフランス杯に臨むにあたって「ウチのチームはよくやっているし、本国にいることができてうれしい。すべての面で周到に準備しているが、あまり相手(4部トレリサック)の情報は詰め込みすぎないようにしている。フランス4部はレベルが高いし、相手は強敵で試合の重要な場面でプレッシャーをかけてくるだろうから」と笑顔で話し、選手たちは仏地元メディアからの取材に盛り上がりを見せていたという。

ただ、せっかく長旅を経てフランスにたどり着いたものの、ASベニュスは0-2でトレリサックに完敗。きびすを返してタヒチに戻ることになった。1万6000キロと言えば、東京から南米ペルーに行けてしまう距離。ほぼ地球の裏側に到達する距離だ。長時間のフライトを考えるだけで憂鬱(ゆううつ)になってきそうだ。

とはいえASベニュスは余裕を持って今月上旬からフランスに入っており、2部ロデーズの練習施設を利用して調整してきた。ロデーズのペイルラード監督からアドバイスを受けるなど、単なる遠征試合というだけでなく、クラブとして多くの収穫を得たはずだ。

海外県・海外領土のクラブでは、88年-89年シーズン大会で仏領ギアナのル・ゲルダーが初めて32強に進出。19-20年シーズン大会でもレユニオン島(アフリカ大陸南東マダガスカル島の東に位置する)から来たサン・ピエロワーズがベスト32に入った。ASベニュスにも今後ますます快進撃への期待がかかる。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)