10月3日に誕生日を迎えたパリサンジェルマンのスウェーデン代表FWズラタン・イブラヒモビッチ(33)が、英テレグラフ紙のインタビューに答え、自身の持つ「父親像」についても触れている。

 ボスニア人の父と、クロアチア人の母の間に生まれたイブラヒモビッチは、スウェーデン・マルメにある移民の町ローゼンゴード地区で育った。2歳の時に両親が離婚してからは、ほとんど父セフィクさんの男手ひとつで育てられてきた。

 「ローゼンゴード出身の不良が、どうやって今の地位まで上り詰めたかって? だれもオレが成功するなんて信じてなかったな。こいつは狂ってるって。でもヤツらの方が間違っていると証明することがオレの原動力になるんだ。常に向上して、周囲にオレを認めさせるんだよ」

 そんなイブラヒモビッチのことを、ただ1人、ずっと信じ続けてきたのが父セフィクさんだった。口数は多くはなかったが、時に優しさをのぞかせることがあったという。ある時、少しだけまとまったお金を得たセフィクさんは、イブラヒモビッチのためにIKEAでベッドを購入。しかし配送料を支払うことができなかった。

 「オレたちは2人で両側からベッドを抱えながら、自宅へ戻ったんだ。でもうれしかったよ。母親とも一緒にいたことはあるけど、ほとんど父親と暮らしてきたんだ。いつだったか、父はすべての給料を使って、オレをサッカーの合宿へ送り出してくれた。家賃だって支払えないというのに」

 そんなイブラヒモビッチも現在、マキシミリアン君とビンセント君という2児の父となった。もし2人の息子が、イブラヒモビッチが若かりし頃のようにバイクを盗んだとしたら、どう対処するのかと聞かれると、「彼らはこっぴどく、徹底的に、叱られることになるだろうな」とニヤリ。そして続けた。

 「決まりを守ることと、相手を尊重すること。オレにとってはそれが大事だ。18歳になったら、何をやってもいい。でもそれまではオレのやり方に従ってもらう。オレは彼らの父親だ。だから2人には、サポーターがオレを見るような目で見てほしくないんだ。彼らは時々、冗談でオレのことを『ズラタン』と呼ぶことがある。だが絶対に『パッパ』と呼ばなければならない」

 ピッチ内外での破天荒な言動だけが取り上げられがちなイブラヒモビッチだが、素顔は真面目な家庭人。息子たちにとってはいつまでも強く、厳格で、かつ愛情のある父親でいつづけるのだろう。