レアル・マドリードは当初、13日に行われた欧州チャンピオンズリーグ(CL)・決勝トーナメント1回戦の組み合わせ抽選会でベンフィカとの対戦が決定していた。

しかし、その後に行われたビリャレアルとアトレチコ・マドリードの抽選の際、本来入ってはいけないチームのボールが入るという重大なミスが発覚したため、欧州サッカー連盟(UEFA)がやり直しを決断。前代未聞の再抽選の末、対戦相手がベンフィカよりも格上と目されるパリ・サンジェルマンに変更され、第1戦は2月15日にパリ、第2戦は3月9日にマドリードで開催されることになった。

再抽選開始前、「ベンフィカとの対戦が決定した抽選は正常に行われ、UEFAの重大なミスはその後に起こったため、我々の抽選をやり直す必要はない」と主張し、UEFAに異を唱え書簡を送ったRマドリードだったが、この件を正式には訴えなかった。しかし再抽選を強行したUEFAに憤りを覚えているとのことであり、クラブの渉外ディレクターを務めるエミリオ・ブトラゲーニョも「世界中の何百万人ものファンが抽選会に注目していたことを考えると、再抽選になったことは驚きであり、残念であり、非常に理解しがたい出来事だ」と苦言を呈していた。

この対戦は、このような事態が起こったことで特に大きな注目を集めるのは間違いないが、さらに両クラブ間にまつわる因縁や深いつながりがあることにより、見どころ満載となっている。

このカードで最も注目を集めるのは、契約が来年6月30日までのキリアン・エムバペだろう。クラブからの巨額の契約延長オファーを拒否し続けている状態の中、相思相愛と言われているRマドリードが今夏の移籍市場で最終的に、契約が残り1年を切る選手に対しては破格となる移籍金2億ユーロ(約260億円)を提示したが、パリ・サンジェルマンに断固拒否され実現できなかった。

これによりRマドリードは契約切れで移籍金がゼロになる来季獲得を目指し、交渉が解禁される1月1日に動く予定を立てていた。しかしパリ・サンジェルマンとの対戦が決定したことで、エムバペ獲得プランに狂いが生じているとのことだ。

シーズン中に契約を結ぶことでエムバペがパリサポーターから激しいブーイングを受けるであろうことを憂慮し、3月9日の第2戦が終わるまでは契約交渉を行わず、さらに合意した場合でも、パリ・サンジェルマンに敬意を払い今季終了後まで正式発表しない考えがあるという。

次に注目となるのは、Rマドリードとの契約満了により今夏パリ・サンジェルマンに移籍したセルヒオラモス。今年1月の左膝半月板損傷後、さまざまな箇所を故障し、1年近くまともにプレーできていない。しかし体調が万全の場合、今対戦に先発出場するとみられているため、特にサンティアゴ・ベルナベウでの一戦は、元キャプテンに対し古巣のサポーターがどのような反応を示すのかが見ものとなる。

昨季まで最大のライバルだったリオネル・メッシとの対決も注目を集める。メッシはバルセロナ時代、Rマドリード戦に45試合出場し、その成績は19勝11分け15敗26得点14アシスト。公式戦のクラシコ史上の出場ランキングではセルヒオラモスに並びトップ、得点ランキングでは2位のクリスティアーノ・ロナウドとアルフレド・ディ・ステファノに8点差をつけ最多得点選手になっている。さらに元バルセロナのネイマールも所属しており、両選手にはサンティアゴ・ベルナベウで激しいブーイングが飛ぶことが予想される。

不遇の瞬間を過ごしているエデン・アザールにとって、パリ・サンジェルマンは苦い思い出のある相手となる。長いけがに苦しむ発端となったのは2年前の2019年11月26日にホームで行われた欧州CL1次リーグ第5節。この時、アザールはスペイン紙に最高評価を受けるハイパフォーマンスを披露したものの、後半、同胞のトーマス・ムニエにハードタックルを受けて途中交代を余儀なくされ、右足首骨折の全治4カ月の重傷を負った。それ以降、度重なるけがに見舞われ続け、現在に至ってもその時の輝きを取り戻せてはいない。そのため今回の対戦は、その苦い思い出を払拭(ふっしょく)するための因縁試合となる。

また、両フロントの関係性も気になるところだ。これまでは両クラブ間を選手が行き来することもあり良好だったが、Rマドリードのフロレンティーノ・ペレス会長とパリ・サンジェルマンのナセル・アルケライフィ会長の関係は現在、エムバペを巡り劇的に悪化し、緊張に包まれているとのことだ。

さらにパリ・サンジェルマンのスポーツディレクターを務めるレオナルドがエムバペの件で度々Rマドリードを非難し、国際サッカー連盟(FIFA)による制裁を求める声まで挙げたことが関係悪化に拍車をかけている。

そしてパリ・サンジェルマンにはセルヒオラモスの他にも、Rマドリードで欧州CL3連覇の立役者のひとりとなったケイラー・ナバス、12大会ぶりとなる“デシマ(10回目の欧州CL制覇)”に貢献したアンヘル・ディ・マリア、下部組織出身のアクラフ・ハキミも所属しているため、特にレアル・マドリードサポーターにとっては興味が尽きない対戦となる。

両者は過去、欧州CLで6回対戦し、Rマドリードが3勝2分け1敗、ホーム2勝1分けと勝ち越している。さまざまな因縁が絡む深いつながりのある強豪同士の対戦まであと約2カ月。間違いなく世界中の注目を集めるものとなるだろう。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)