ワールドカップ(W杯)北中米大会もファイナリストが決定し、開幕前の下馬評通りスペインが4大会ぶり2度目の優勝まであと1勝に迫った。

2026年7月14日、フランスに勝利し、喜び合うスペインの選手たち(AP)
2026年7月14日、フランスに勝利し、喜び合うスペインの選手たち(AP)

サイドアタッカーにけが人を抱えた状況下で今大会に臨んだスペインは、カボベルデ(0−0)に引き分けた後、サウジアラビア(4−0)、ウルグアイ(1−0)、オーストリア(3−0)、ポルトガル(1−0)、ベルギー(2−1)、フランス(2−0)相手に6連勝を達成。7試合6勝1分け、13得点1失点と、特に守備陣の活躍が目立つ内容で勝ち進んできた。

中でも優勝候補筆頭のフランスとの準決勝は、スペインの実力を証明する最高の試合となった。ここまでわずか1失点のスペイン、16得点のフランスの“最強の盾と最強の矛”の一戦は「事実上の決勝戦」と目された。スペインが立ち上がりからペースを握ってリードするというのは、2年前の欧州選手権、昨年の欧州ネーションズリーグの準決勝2試合で勝利した時とまさに同じ展開である。

前半22分ヤマルが獲得したPKからオヤルサバルが先制し、後半13分にはオーバーラップしたペドロ・ポロがダニ・オルモとの連係から追加点。そのまま危なげなく2−0で勝利し、今大会6度目のクリーンシートおよびフランス戦3連勝を成し遂げ、W杯史上2度目の決勝進出を果たした。

2026年7月14日、フランスのディニュがスペインのヤマルにファウル(ロイター)
2026年7月14日、フランスのディニュがスペインのヤマルにファウル(ロイター)
2026年7月14日、フランス戦、PKで先制ゴールを決めたスペインのミケル・オヤルサバル(AP)
2026年7月14日、フランス戦、PKで先制ゴールを決めたスペインのミケル・オヤルサバル(AP)
2026年7月14日、フランス戦で2点目を決めるスペインのペドロ・ポロ(ロイター)
2026年7月14日、フランス戦で2点目を決めるスペインのペドロ・ポロ(ロイター)

スペインが2点リードでペースダウンしたことにより、最終的なスペインとフランスのスタッツはほぼ互角になったが(ボール支配率51%-49%、シュート10本-10本、枠内シュート2本-3本、パス本数427本-395本、ボールリカバリー50回-45回、ボールロスト119回-142回、GKセーブ3回-0回)、スペインが終始ゲームをコントロールし、圧倒した内容となった。

それはフランス代表FWエムバペが試合後に、「戦術面や技術面、全体的なパフォーマンスにおいて自分たちが望む試合ができなかった。W杯の準決勝ではやるべきことをやらなければ勝つことはできない。スペインは自分たちを特徴づけるゲームプランを貫いた」と自分たちの力を発揮できなかったことを認めていたことからも分かるだろう。

デラフエンテ監督は勝利後、「我々は世界最高の代表チームと対戦したが、フランスは世界最強のチームと対戦した」と相手をリスペクトしつつも、この勝利が妥当であったことを示唆。決勝の相手について聞かれると、「リオネル・スカローニ監督との友情から、アルゼンチンと対戦できることを楽しみにしている。しかし、私は以前からイングランドが決勝進出の最有力候補のひとつだと言ってきたし、まさにその通りになっている」と述べていた。

「事実上の決勝戦」は、スペインの多くの都市でパブリックビューイングが開催されるなどこれまで以上に注目され、視聴率は81.3%に達し、初優勝を成し遂げた2010年の南アフリカ大会決勝に次ぐ視聴者数を記録した。

スペイン王室も公式SNSで、ユニホームを着た国王一家がゴールに喜ぶ様子を投稿し、国王が「今、国全体が君たちの味方だ。タイトルを懸けて戦う時が来た」と盛り上げると、ペドロ・サンチェス首相は「素晴らしい!さあ、決勝に臨もう!スペイン代表はまたしても我々に夢を見せてくれた」と喜びを露わにした。

ここまで圧倒的な得点力と強さで勝ち抜いてきたフランスだけあって、スペインとの一戦を見た誰もが、“フランスらしさ”がなかったと感じたのではないだろうか。スペイン紙マルカはその理由を、「スペインがサッカーというスポーツが発祥した時から存在する“ボールを巧みに扱う”という戦術でW杯最強の攻撃陣を封じ込めた。フランスにほとんどボールに触る機会を与えず、“四銃士(エムバペ、デンベレ、オリーズ、バルコラ)”を無力化した。フランスが中盤に2人しか置かず、ロドリ、ファビアン・ルイス、ダニ・オルモがボールを自在に扱った状況下では、そのような結果になるのは当然だ」と、中盤の構成力がフランス自慢の攻撃陣を凌駕(りょうが)したことを強調した。

スペイン紙アスは「デラフエンテが指揮を執り、オーケストラが見事な演奏をやり遂げた」と表現。戦術に関しては「スペインは試合開始からフランスにペースを落とさせ、トランジションで縦に展開できないようダメージをうまくコントロールした。フランスと正面からぶつかるのは得策ではない。焦らずにボールを奪い取ることが重要だ。素晴らしいパフォーマンスを披露したロドリを擁し、そこに重点を置いた。フランスは彼が味方にいなかったことを悔やんだに違いない、前線ではダニ・オルモがさらに素晴らしい活躍を見せた」と分析した。

2026年7月14日、スペインに敗れ、落胆した様子のフランスのキリアン・エムバペ(ロイター)
2026年7月14日、スペインに敗れ、落胆した様子のフランスのキリアン・エムバペ(ロイター)

試合翌日のスペイン各紙の一面には「歴史的圧勝」、「壮大」、「なんて偉大なんだ!」などの称賛の言葉が並んだ。この結果は、デラフエンテ監督就任時からの一貫した取り組みのたまものと言える。

指揮官は22年12月の就任会見時、前任者のルイス・エンリケ(現パリ・サンジェルマン監督)よりも攻撃的なサッカーを展開すると宣言。ボールを持ちすぎることで守備を固めた相手を崩せなかった前回大会の失敗を教訓に、ポゼッション至上主義からの脱却を図り、ウィングのスピードを生かしてより縦への攻撃を重視した戦術を導入した。これにより、持ち味の卓越したパス回しで試合の主導権を握りつつ、攻撃のスピードを向上させることに成功している。

大半の試合でボール支配率が相手を上回るという状況は変わらないが、ルイス・エンリケ監督時代よりも相手のディフェンスライン裏にスペースができやすくなり、そこを突いている。さらに、ボールロスト後のハイプレスを徹底したことで、相手の守備網を破壊する術だけでなく、堅守を手に入れたことが今大会の結果につながっている。

選手に目を向けると、他の強豪国と比べて派手さはないが、ハイレベルな個の能力が連携した組織力が際立っている。W杯最長無失点記録を樹立したGKウナイ・シモンを中心とした守備陣は安定したパフォーマンスを発揮し、世界最高の呼び声高いロドリ、ファビアン・ルイス、ペドリなどを擁するMF陣は自分たちのアイデンティティーを体現している。

攻撃陣は、ヤマルがけが明けで本調子でないもののフランス戦でのPK誘発のように決定的な仕事を果たし、エースのオヤルサバルはここまで5得点と高い決定力を発揮し、けがの影響が残るニコ・ウィリアムズの穴をバエナが豊富な運動量でカバーしている。

傑出した組織力でスペインは、23年3月のデラフエンテ監督初陣以降、世界で最も負けにくいチームとなっている。国際Aマッチ47試合の成績は、36勝9分け2敗(※PK戦は引き分け扱い)。敗北は欧州選手権予選のスコットランド戦と親善試合のコロンビア戦のみで、イタリア、ドイツ、フランス、イングランドなどの強豪を撃破。その間に参加した4大会全てで決勝に進出し、今大会は23年の欧州ネーションズリーグ、24年の欧州選手権に次ぐ、3度目のタイトルを手に入れる絶好のチャンスとなっている。

また、フランス戦の勝利により、公式戦連続無敗の世界記録を38試合(30勝8分け)に更新中。国際Aマッチの連続無敗は37試合(30勝7分け)で、イタリアが18年から21年にかけて築いた世界記録に並んだ。すなわち、W杯2度目の優勝を成し遂げた場合、新記録を樹立することになる。

スペイン国内は今、2度目の優勝が現実味を帯びてきたことで国中が熱狂に包まれている。決勝戦は19日(日本時間20日)、ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムで開催され、3月にフィナリッシマ(欧州王者と南米王者の対戦。中東情勢の影響で中止)で対戦する予定だったアルゼンチンとタイトルを争うことになった。(高橋智行通信員)

【イラスト】W杯決勝トーナメント4強出場国の詳細データ
【イラスト】W杯決勝トーナメント4強出場国の詳細データ
【イラスト】W杯北中米大会勝ち上がり(日本時間7月16日現在)
【イラスト】W杯北中米大会勝ち上がり(日本時間7月16日現在)