バルセロナのスペイン代表MFガビ(18)の周囲が今、非常に騒がしくなっている。それはクラブの財政難およびサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)に伴い、移籍の可能性が報じられているからだ。
■17歳62日でスペイン代表デビュー
ガビは2015年に11歳でベティスからバルセロナの下部組織に加入。順調にステップアップし、クラブ財政難による選手層の薄さやけが人続出という状況が重なった状況で、当時の監督クーマンにより21年8月のヘタフェ戦でクラブ史上4番目の若さでスペインリーグデビューを果たした。
即座にスペイン代表に選出されると、トップチームデビューから約1カ月後の10月に行われた欧州ネーションズリーグ準決勝イタリア戦で、同国代表史上の最年少となる17歳62日でデビューを達成。それまでの記録保持者アンヘル・スビエタの17歳284日を200日以上も上回ったことで話題となった。
その後、瞬く間にバルセロナの主力となっただけでなく、昨年末に開催されたワールドカップにも中心選手として参加。さらにその直前に欧州のクラブでプレーする21歳以下の最優秀選手に贈られるゴールデンボーイ賞を受賞するなど、その勢いはとどまるところを知らない。
■移籍金うなぎのぼり130億円超
若干18歳にしてガビの市場価値はうなぎのぼり。ドイツの移籍情報サイト「トランスファーマーケット」は現在、9000万ユーロ(約130億5000万円)と見積もっており、チュアメニ(レアル・マドリード)とケイン(トットナム)に並ぶ世界11位。その上にはエムバペ(パリ・サンジェルマン)、ハーランド(マンチェスター・シティー)、ビニシウス(Rマドリード)など、錚々(そうそう)たる選手たちが名を連ねている。
順風満帆にスター街道を歩むガビだったが、現在、バルセロナの財政難により将来が不透明になっている。昨年9月に契約解除金が10億ユーロ(約1450億円)に大幅アップされる26年6月30日までの新契約で合意したが、その後、サラリーキャップの条件を満たしていないという理由で、スペインリーグにトップチーム登録を拒否されてしまう。これに対し、バルセロナは1月に地元の裁判所に訴えを起こし、暫定的にトップチーム登録が認められることとなった。
しかし3月、同裁判所からバルセロナの訴訟に不備があったとしてその措置が却下されたため、現在はユースチーム登録に戻り、30番をつけてリーグ戦を戦っている。
さらにバルセロナは、6月30日までに選手の賃金等のコスト削減が2億ユーロ(約290億円)必要とされるサラリーキャップ問題を解決できない場合、現在のプロ契約が無効となり、ガビは今夏、移籍金なしで退団できる状態になるとのことだ。
■チェルシー白紙の小切手を提示
ガビを無料で獲得できるかもしれないこの状況を、当然のことながら欧州のビッグクラブは放っておかない。すでにイングランドやドイツのクラブがガビの関係者に接触したと報じられ、さらにはチェルシーがガビの代理人と会合を開いた、白紙の小切手を提示した、というような具体的な報道も出ている。
15日のヘタフェ戦前日会見でガビの将来について聞かれたシャビ監督は「正直、彼がここよりも幸せを感じられる場所があるとは思えない。我々は彼のことをとても評価し、その素晴らしいプレーを楽しんでいる。他クラブでは今のような幸せを感じることはできないだろう」と“ガビにとってバルセロナが最高のクラブ”であることを強調した。
■ルイス・エンリケ監督浮上なら
これに対し、いくつかのスペインメディアが、ガビがチェルシー移籍に傾く可能性を挙げていた。その理由の1つ目は巨額オファーが届いていること、2つ目はガビに大きな信頼を寄せ、代表に抜てきした元スペイン代表監督のルイス・エンリケ氏が来季、チェルシーを率いる可能性があることだ。3つ目は一向に解決されない契約問題に対し、ガビがいら立っていることだ。
またスペイン紙アスはガビのそのような状況を「愛か金かのジレンマに陥っている」と表現。チェルシーへの移籍を選んだ場合は莫大(ばくだい)な年俸を得られるだけでなく、スター選手としての道が約束されているため、来季も続く可能性がある厳しい状況の中、バルセロナ愛を貫き通すかに注目している。
現時点でガビはバルセロナでの成功を夢見ているとのことであり、スペイン紙ムンド・デポルティボが実施した「ガビが来季バルセロナを去ると思うか?」というアンケートでは、76%の人たちが「ノー」と答え残留への希望を示す結果となった。
しかしクラブは財政難に加え、さらに審判買収疑惑のある「ネグレイラ事件」という大きな問題にも直面している。ピッチ外での不安定な状態が今後も続いた場合、ガビは不本意ながらも大きな決断を下す可能性は十分あるだろう。しかしそれは、スペインサッカー界が大きな宝を失うことを意味している…。運命の6月30日まであとわずか。バルセロナがこの難局をどのように乗り越えるのか、大注目となる。
【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)


