スペインリーグの夏の移籍市場が例年より早い8月30日に終了し、昨夏より17人少ない140人の新戦力が加わった。
4季ぶりの優勝を狙うアトレチコ・マドリードが最も派手な動きを見せた一方、バルセロナを筆頭にセビリア、バレンシア、ベティスなど、いくつものクラブが財政的な問題を露呈し、またもや期限付き移籍やフリーでの補強が目立つ結果となった。
■欧州5大リーグでは最下位
そんな中で注目を集めたのは、フランス代表FWエムバペ(レアル・マドリード)、スペイン代表MFダニ・オルモ(バルセロナ)、アルゼンチン代表FWフリアン・アルバレス(Aマドリード)がやって来たことや、コロンビア代表MFハメス・ロドリゲス(ラヨ・バリェカノ)が久々にスペインに戻ってきたことだろう。また、浅野拓磨がマジョルカに加入したことで、今季は4年ぶりに日本人選手が2人プレーしている。
その一方、クロース(引退)、ナチョ・フェルナンデス(アル・カーディシーヤ)、ホセル(アル・ガラファ)、ギュンドアン(マンチェスター・シティー)、セルジ・ロベルト(コモ)、モラタ(ACミラン)といった名手が去っていた。
スペインリーグの今夏の補強総額は、前年から約1億1200万ユーロ(約179億2000万円)増の5億4500万ユーロ(約872億円)。これはコロナ禍以降の4年間で最高額。しかし、過去最高を記録した19-20年シーズンと比べると7億5000万ユーロ(約1200億円)ほど少なく、財政面はまだ完全回復できていない状況だ。
欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス)の補強総額を比較すると、プレミアリーグが今夏も資金面で圧倒的な強さを見せ、23億1100万ユーロ(約3697億6000万円)で再びトップとなった。
続いて、昨夏3位のセリエAが10億100万ユーロ(約1616億円)で2位、昨夏2位のフランスリーグが7億200万ユーロ(約1123億2000万円)で3位と順位が入れ替わった。ブンデスリーガは5億9600万ユーロ(約953億6000万円)で4位のままである。
スペインリーグは2年連続の最下位。プレミアリーグとの差は昨夏の23億490万ユーロ(約3678億4000万円)から17億6600万ユーロ(約2825億6000万円)と、5億3890万ユーロ(約862億2400万円)縮まったものの、約3分の1と依然として大きな開きがある。
■リーグが課す厳しい財政管理
スペインリーグが支出面で欧州の主要リーグの後塵を拝している大きな原因として、ハビエル・テバス会長が近年各クラブに課している厳しい財政管理が挙げられる。
そんな中、スペインリーグで今夏最も補強費を投じたのは、1億8500万ユーロ(約296億円)のAマドリード。フリアン・アルバレスを今夏のスペイン最高額の移籍金7500万ユーロ(約120億円)で獲得。さらにノルウェー代表FWセルロート、スペイン代表DFル・ノルマン、イングランド代表MFギャラガーにもそれぞれ、3000万ユーロ(約48億円)以上費やした。その一方、ジョアン・フェリックス、モラタ、デパイ、サビッチ、エルモソなどを放出し、チームをバランスよく刷新している。
2番目に補強費が多かったのはセルロートやヨルゲンセンなどの選手を大量放出したビリャレアル。カーボベルデ代表DFローガン・コスタ、コートジボワール代表DFバイリー、U-20フランス代表DFカンブワラなどに計6050万ユーロ(約96億8000万円)を投じた。
3位は依然としてサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)の問題を抱え、望むような補強ができなかったバルセロナで5770万ユーロ(約92億3200万円)。補強の第一候補に挙げたビルバオのスペイン代表FWニコ・ウィリアムズ獲得に失敗し、ダニ・オルモを5500万(約88億円)、スペイン人FWパウ・ビクトルを270万ユーロ(約4億3200万円)で手に入れた。
■Rソシエダードの補強額5位
今季、欧州チャンピオンズリーグに初挑戦するジローナは5490万ユーロ(約87億8400万円)で4位。昨季のスペインリーグ得点王ドフビク、スアレイシュ・ガルシア、サビーニョ、ヤン・コウトといった主力を失った穴を、パリ五輪で金メダルに輝いたU-23スペイン代表FWアベル・ルイス、コロンビア代表FWアスプリージャなどで埋めている。
中心選手のル・ノルマンやミケル・メリーノを放出したことで戦力ダウンが懸念されるレアル・ソシエダードは、4550万ユーロ(約72億8000万円)で5位。移籍金2000万ユーロ(約32億円)で獲得したアイスランド代表FWオスカルソンを筆頭に、スペイン人DFハビ・ロペス、パリ五輪金メダルメンバーのU-23スペイン代表FWセルヒオ・ゴメス、クロアチア代表MFスチッチ、モロッコ代表DFアゲルドを補強した。
前人未到の7冠に挑む昨季の王者Rマドリードは5位。エムバペをフリーで獲得したため、18歳の若きブラジル代表FWエンドリッキに3500万ユーロ(約56億円)を費やしたのみ。不安視されるセンターバックは補強せず、期限付き移籍から戻ったスペイン人DFバジェホをメンバーに加えただけだった。
マジョルカはフリーで獲得した浅野を含む計6人を獲得し、235万ユーロ(約3億7600万円)で17位。ハメス・ロドリゲスを獲得したラヨ・バリェカノは今夏唯一、補強費をまったく使わないクラブとなった。
■移籍金収入Aマドリード1位
スペインリーグ全体の今夏の移籍金収入に目を向けると、前年比約5600万ユーロ(約89億6000万円)増の5億3400万ユーロ(約854億4000万円)で、支出額を若干下回った。
選手を多数売却したAマドリードが9390万ユーロ(約150億2400万円)でトップ。これに続いて、ビリャレアルが7900万ユーロ(約126億4000万円)で2位、Rソシエダードが6835万ユーロ(約109億3600万円)で3位。
そしてジローナが5505万ユーロ(約88億800万円)で4位、バルセロナが3830万ユーロ(約61億2800万円)で5位につけている。
Rマドリードは1600万ユーロ(約25億6000万円)で10位。最下位は今季1部に復帰したエスパニョールで150万ユーロ(約2億4000万円)だった。
夏の移籍市場が終わり、メンバーが固まった各クラブはこの後、本格的に24-25年シーズンに臨むことになる。最終的にどのクラブが最も効果的な補強を成功させたか、今季終了後に答えが出るだろう。
<今夏のスペインリーグ各クラブの補強費>
1、Aマドリード 1億8500万ユーロ(約296億円)
2、ビリャレアル 6050万ユーロ(約96億8000万円)
3、バルセロナ 5770万ユーロ(約92億3200万円)
4、ジローナ 5490万ユーロ(約87億8400万円)
5、Rソシエダード 4550万ユーロ(約72億8000万円)
6、Rマドリード 3500万ユーロ(約56億円)
7、ベティス 2205万ユーロ(約35億2800万円)
8、バリャドリード 1650万ユーロ(約26億4000万円)
9、ビルバオ1500万ユーロ(約24億円)
10、アラベス 1100万ユーロ(約17億6000万円)
11、セルタ 800万ユーロ(約12億8000万円)
11、セビリア 800万ユーロ(約12億8000万円)
13、オサスナ 780万ユーロ(約12億4800万円)
14、ヘタフェ 600万ユーロ(約9億6000万円)
15、ラス・パルマス 400万ユーロ(約6億4000万円)
16、レガネス 346万ユーロ(約5億5360万円)
17、マジョルカ 235万ユーロ(約3億7600万円)
18、バレンシア 165万ユーロ(約2億6400万円)
19、エスパニョール 40万ユーロ(約6400万円)
20、ラージョ 0ユーロ
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)




