ハンブルガーSVのFW伊藤達哉(20)が、レーバークーゼン戦の後半37分から初出場を果たし、日本人通算30人目のブンデスリーガーとなった。15年に柏U-18から加入し、下部組織でプレーしていたが、故障者などの関係で前節からトップに合流。各年代の日本代表経験はない、左ウイングが本職の「東京五輪世代」が、伝統の舞台で大きな1歩を踏み出した。DF酒井高徳(26)はフル出場。チームは0-3で敗れた。

 伊藤は20日のドルトムント戦に続く2回目のベンチ入りで、出番をつかんだ。交代出場のために呼ばれた時は「いよいよ来た!」との思いと、「とりあえず点取ってやろう」との意気込みだった。約10分のプレーでシュートを打てそうな場面もあった。「そこでパスしちゃったところが、ちょっと…。言葉で『準備できている』と言っても、まだできていなかった」と、素直に反省した。

 J1を経由せずに渡欧した異色の選手だ。柏U-18時代に出た国際大会の活躍により、18歳になった15年7月にハンブルガーSVと契約。同クラブのU-19、4部を戦うハンブルガーSV2で出場していた。

 身長169センチ、58キロながら「サイドで1対1で(ボールを)渡してくれたら、抜く自信はある。相手がどんな選手だろうと」と自負する。目標は元フランス代表のリベリ(Bミュンヘン)。「小さい(170センチ)のに世界でトップクラスのサイドハーフなので、参考になることばかり」と目を輝かせる。

 待望の1部デビューは黒星でほろ苦いものになったが、収穫も多い。相対した相手右サイドバックは同じ20歳のドイツ代表ヘンリクス。「うまかったですね。僕のボキャブラリーじゃ伝えられないほど」と笑うほど、レベルの高さを体感した。「あれだけ走ってこれだけのクオリティーのリーグはほかにないと思う」と踏み出した舞台の魅力も再認識した。

 これまで各年代の日本代表に選ばれた経験はない。だが、ブンデスでもまれることで、東京五輪や日本代表のユニホームに近づく可能性は十分ある。【鈴木智貴通信員】

 ◆東京五輪世代 20年東京五輪の出場資格は、現行の規定通りなら97年1月1日以降に生まれた選手。これは五輪サッカーが原則23歳以下で行われるため。今年20歳になった、あるいは20歳になる選手(早生まれを除き、基本的に大学2年生以下)より若い世代が対象となる。中でも主軸となる世代は、今年5~6月にかけて韓国で開催されたU-20(20歳以下)W杯に出場したフローニンゲン堂安や磐田小川ら。7月のU-23アジア選手権1次予選後は目立った活動はないが、選定中の新監督のもとで、年末から活動が本格化する見込み。来年1月には中国でU-23アジア選手権が行われ、日本は五輪世代のU-21日本代表を編成して臨む見込みとなっている。