母としての五輪挑戦早く常識になって
初めてカーリングを観戦しました。会場はママたちであふれていました。日本の小笠原さん、船山さんはもちろん、世界では40代のママさん選手がたくさんいるそうです。「氷上のチェス」は、人生経験が役立つため40代でも第一線で活躍できる。とてもうらやましい環境です。
カーリング以外の競技では、残念ながらママさん選手は少ない。スポーツの世界では、結婚、出産=引退が、まだ常識になっています。確かに体を酷使するアスリートが、夫、子供との生活を両立することは簡単ではない。家族の理解は必須になります。さまざまなハードルはありますが、結婚、出産で、未練を残したままやめて、アスリートとしての可能性を消してしまうことには反対です。
ママさんアスリートを増やすためには、環境を整えることが第一。国立スポーツ科学センター(JISS)に託児所ができたことは素晴らしいですが、そこで練習しない選手も多い。特に冬季選手は遠征が多いので、全国各地にアスリート託児所ができれば助かると思います。
出産後は骨盤が緩む。体の軸がぶれ、股関節がガクガクする感じがします。スケートは約1ミリの刃に乗るため、わずかなバランスの崩れに、わたしも最後まで苦しみました。ホルモンバランスも崩れて髪が抜けたり、歯が弱ったりします。妊娠期、産後のトレーニングの研究が進めば、もっとママさんアスリートも増えるでしょう。
ソチ五輪選考から漏れましたが、母としての挑戦に後悔はありません。安藤美姫選手もそうですが、後輩の選手たちが「こんなやり方もあるんだ」と思ってもらえればうれしい。母としての五輪挑戦が当たり前で、常識と思われる時代が早く来てほしいです。(長野五輪女子500メートル銅メダリスト)
日刊スポーツ新聞社
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