史上初となる2度目の3冠&史上3校目の5連覇を狙う青学大は、1位東洋大と5分30秒差を付けられた。5時間32分1秒の6位。3区森田歩希主将(4年)がトップでたすきをつなぐも4区岩見秀哉(2年)、5区竹石尚人(3年)が誤算だった。平成以降、往路での逆転総合優勝の最大差は06年亜大の2分51分。原晋監督(51)から珍しく弱音も漏れたが「歴史に残る逆転」を信じる。

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東洋大往路Vの余韻が残る芦ノ湖。いつも前向きな青学大の原監督の口から弱音が続いた。「5分半か。厳しいな」「そう簡単に返せるタイムではないな」。昨年も往路優勝こそ逃したが、その差は36秒。まるで状況は違う。勝ち方を知っているからこそ、逆転の勝算は限りなく低いと分かる。「これが箱根駅伝。難しいな」とため息が漏れた。

8位でたすきを受けた3区森田が1時間1分26秒の区間新記録でトップに立つまでは青写真通り。11月に左足付け根を痛め、状態が完璧でない中の快走で、流れを呼び込んだように見えた。ただ3大駅伝初出場の4区岩見が低体温症で区間15位の大ブレーキ。東洋大との差を2分以内なら想定内も、3分半に広げられた。悪循環は続き、区間上位を期待された5区竹石も「体が重かった」と区間13位の失速。足がつりかける悪癖が出た竹石は「実力不足」とうなだれた。

立場は限りなく厳しい。過去94大会で5分30秒差以上での復路逆転は、7度だけ。うち3回は戦前。86年順大は往路5位から6分32秒をひっくり返したが、往路優勝の早大が復路は9位と沈んだ。平成以降に限れば、06年亜大の2分51秒の逆転を上回る数字はない。6位からの逆転も長い歴史で過去1回。上位校の失速がないと奇跡は起こらないことは歴史が物語っている。

とはいえ諦めない。原監督は「歴史に残る平成の大逆転をやってやろうじゃないか」と選手へ呼び掛けた。8区から9区の戸塚中継所で「2分以内ならば、おもしろいことが起こるかもしれない」。6区、7区とともに前年区間賞を獲得した小野田、林が控えている。「1人1分縮めていけば」と話した。昨年11月の全日本では区間3位と好走した3年生の鈴木は当初、10区で起用方針だったが、8区に前倒しする可能性もある。

出雲、全日本と盤石に制しただけでなく、練習消化率、5000、1万メートルの自己記録など、原監督が就任15年目で「過去最強」と呼ぶチームに訪れた窮地。状況を見れば、絶望的なのは間違いない。順大(86~89年)駒大(02~05年)と最近4連覇した2校も5連覇を阻まれている。ただ乗り越えた試練は厳しいほど、偉業の輝きも増していく。【上田悠太】