“ポスト・ボルト”有力候補の1人注目、ノア・ライルズ(21=米国)が男子200メートルに19秒50の世界歴代4位で優勝した。男子1500メートルのティモシー・チェルイヨット(23=ケニア)が3分28秒77、男子棒高跳びのピョートル・リセク(26=ポーランド)が6メートル01と、ライルズの19秒50も含め3種目で今季世界最高が誕生した。

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後半型のライルズが直線にトップで入った時点で、勝利はほぼ確定した。ホームストレートは予想通り後続選手たちを寄せつけず、2位に5メートル近い差をつけた。世界記録は2年前に引退したウサイン・ボルト(ジャマイカ)の19秒19でまだ0秒31の差があるが、13年以降の7シーズンではライルズの19秒50が最高記録である。

「ここのトラックは燃え上がっている(好記録が多く出ている)。コーチが私にやらせたい走りを、今日はうまくできたと思う」

“ポスト・ボルト候補”と言われることに対しては以前、「その肩書は何人もいるからね」と笑い飛ばしていたライルズ。しかしこのあと0秒1でも記録を伸ばせば、ボルトの世界記録が現実的な目標になる。

男子棒高跳びでは身長194センチのリセクが自身初の6メートル越えを果たして優勝したが、少し珍しい形での新記録となった。

6メートル01のバーに挑んだリセクとサム・ケンドリクス(26=米国)の2人が、その高さを3回とも失敗。2人は5メートル95まで失敗試技が1度もなく、通常規則では同順位となって優勝者が決まらない。

その場合は2人が跳べなかった高さから優勝決定試技を始める。各高さは1回だけの試技が認められ、どちらかが跳ぶまでバーを下げていく。2人が同じ高さを跳べば再びバーを上げる。決着がつくまでそれが繰り返されるのだ。

優勝決定試技では体力がなくなっているケースが多く、最初の高さ(=通常試技の最後に失敗した高さ)を跳ぶケースはほとんど見られないが、今大会のリセクはその高さに成功して優勝を決めた。

「人生の最高の日の1つになった。勝因は私の体の状態が良かったことと、最後のジャンプを集中して行えたことだと思う」

9月開幕の世界陸上は前回優勝者のケンドリクスと、昨年6メートル05の世界歴代2位を跳んでいるアルマン・デュプランティス(19=スウェーデン)が金メダル候補の双璧だったが、そこに長身のリセクが加わった。

また女子100メートルでは、シェリー・アン・フレイザー・プライス(32=ジャマイカ)が10秒74で圧勝。08年、12年の五輪金メダリストが、17年の出産によるブランクを克服し完全復活をアピールした。

◆今季の男子200メートル

母親が日本人のマイケル・ノーマン(21=米国)が5月のゴールデングランプリ大阪に19秒84の自己タイで優勝すると、6月のダイヤモンドリーグ・ローマ大会に19秒70と、その時点での19年シーズン世界最高で優勝した。

ライルズはローマでは0秒02差でノーマンに敗れたが、ローザンヌで一気に記録を上げてきた。ノーマンはローザンヌには出場していなかったが、2人の次の対決はかなりの激戦になる。

全米学生に19秒73で優勝したディバイン・オドゥドゥル(22=ナイジェリア)はダイヤモンドリーグには出場していないが、2人に迫る力がありそうだ。サニブラウン・アブデル・ハキーム(20=フロリダ大)が全米学生3位のときに出した20秒08は今季世界14位。日本人初の19秒台を出せば世界陸上でも2度目の決勝進出が見えてくる。