全国高校総体・陸上女子100メートルで連覇を果たした御家瀬緑(恵庭北3年)が準決勝でマークした11秒50は日本高校歴代2位。日刊スポーツでは3回連載「スプリンター御家瀬 強さのヒミツ」と題し、レースを分析したデータや関係者の証言、人物像を通して強さに迫る。

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御家瀬は競技後でも変わらない。胸の内に喜怒哀楽の感情があったとしても、結果にかかわらず記者の目を見て繰り返される質問に1つ1つ丁寧に答える。取り乱す姿は見たことがない。そんなクールな印象とは違い、普段は笑顔の絶えない普通の女子高生だ。

昨年11月に恵庭北の生徒が修学旅行で泊まった今帰仁村の民宿「よしもと家」の義元洋子さん(58)は、地元開催の総体で御家瀬の応援に駆けつけた。「娘を応援している気持ち。沖縄のかあちゃんみたいにね」。たった1度の交流でも人を引きつける魅力がある。

走る才能を花開かせるのは日常の積み重ねだ。義元さんが当時印象に残ったというのが、6人のグループで宿泊した翌朝のこと。「人より早く起きて『アップしてきます』といって民宿前の芝生で体を動かしていました」。非日常の環境に身を置いても、ルーティンを崩さない姿があった。重圧のかかる5日100メートルの当日。義元さんらと再会したとき、予選と準決勝の合間にもかかわらず、笑顔で対応し旧交を温めた。

部では主将を務める。圧倒的な実績があっても、飾らず、おごることもない。小学生から全国大会で切磋琢磨(せっさたくま)してきた町井愛海(恵庭北3年)は「みーちゃん(御家瀬の愛称)はみんなからすごくいじられてます」。環境や状況、立場が変化しても自然体でいられる。心の強さが、大舞台でも本来の実力を余すところなく引き出している。【浅水友輝】(おわり)