東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会、政府の4者協議が1日、都内で行われ、暑さを避けるため、五輪マラソン、競歩の会場を札幌市に移転することで決着した。

唯一反発していた東京都の小池百合子知事が「合意なき決定」と不満をあらわにしながら渋々、容認。近代五輪124年の歴史で初めて、開催都市圏でマラソンが行われない、異常事態となった。

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五輪の華、マラソンが東京から消えた。正午、東京・晴海の4者協議会場でIOCのコーツ調整委員長が札幌への移転決定を告げた。小池氏は眼光鋭く出席者を見回して言った。「あえて申し上げるなら、合意なき決定だ」。招致決定から6年。都が約300億円をかけて整備した遮熱性舗装などの暑さ対策、沿道の応援を楽しみにしていた子どもたちの夢が、水の泡となった。

前日深夜にまで及んだ4者による実務者協議で、4項目が合意に至った。(1)会場変更の権限はIOCにある(2)札幌移転に伴う費用の都負担ゼロ(3)既に都、組織委が支出した2種目の経費は精査・検証の上、都が別の目的に活用できないものは都に負担させない(4)マラソン、競歩以外の会場変更はなし。ここに、国際パラリンピック委員会がパラマラソンの東京開催を確約し、都は移転をのんだ。組織委の森喜朗会長は、小池氏の決断を「大英断」とたたえ「心から敬意を表したい」と述べた。

17年5月に大枠合意した費用分担の原則では、都外の仮設費用は都が負担するとしているが、今回は適用外。コーツ氏は「費用負担を札幌市、北海道とも協議する」と明言。組織委はIOCに負担を求めたい考えだが同氏は「今決まっているのは、都が負担しないということだ」と、肝心なことは口にしなかった。

一方で札幌市と北海道は原則通り、都と組織委の負担を求めており、早くも、費用面で意見が対立する構図だ。(3)の補償も火種で、ミソは「別の目的に活用できないもの」という文言。都のマラソンコースはパラで使用するため「活用できる」と分類された場合、遮熱性舗装整備費など大部分が都に返金されない可能性がある。

コース設定も急がれる。森氏はスタート、ゴール、開始時間について「12月のIOC理事会での承認を目指す」としたが、約1カ月しかない。コスト削減の観点から施設整備も簡素化すると断言。組織委は3日にもコース下見のため、札幌市に入る。開幕まで残り9カ月を切り、予期せぬ難題が山積みだ。【三須一紀】

<マラソン、競歩移転での課題>

■費用

IOCは「都の負担なし」も、札幌市と北海道は都と組織委に負担求める

■コース

北海道マラソンと同コースが有力。公認を受けるための路面の状況確認は雪が降るとできなくなるため、早急な決定必要

■日程

マラソン男女同日実施など国際陸連が検討中

■警備やボランティア配置

新コース決定後、課題を洗い出す必要あり

暑さ対策

ビルの日陰が多い都内と比べ、直射日光を受けやすいとの指摘も

■チケットの払い戻し

陸上女子マラソンは他種目とセットのため特に困難